
タワーマンションが空き室だらけになり、廃墟になるのを防ぐためとして、神戸市が空き部屋の所有者に新たな税負担を求める方針を打ち出しました。いわゆる「空室税」です。実際には居住しない投資目的の購入者が増え、実際に住みたがっている人を追いやっているうえ、将来は“廃墟化”するのではないかとの懸念が強まってきたからです。「空室税」が具体的に検討されるのは日本で初めてのこと。有識者会議の議論では慎重意見も出ましたが、神戸市長は導入に前向きです。「空室税」をやさしく解説します。
神戸市長「晴海フラッグのような街にはしない」
「タワマンには非居住部分がかなりある。居住目的で住宅の取得を希望する方が適正な価格で取得できない、非居住戸数が多いと(なると)、貴重な住宅ストックが活用されていない(ことになる)。この問題意識は、私も共有をいたします」
久元喜造・神戸市長は年明け最初に行われた1月10日の記者会見で、このように語ったうえで、東京のタワマン「晴海フラッグ」(東京都中央区)を名指しし、「あの晴海フラッグのような街には、神戸はしない、したくないという思い」と強調しました。
晴海フラッグとは、東京オリンピックの選手村を改修して居住用とする高層マンション群です。13ヘクタールの広大な敷地に、分譲住宅や商業施設など24棟を建設。総戸数5632戸、約1万2000人が住む分譲マンションとしては日本最大規模になる計画です。
ところが、入居開始から半年が過ぎた2024年6月時点で、完成済み17棟・2690戸のうち、3割以上の943戸に住民票の登録がなされていなかったことがNHKの調査報道で明らかになりました。住居として利用されていない部屋は、ほとんどが法人による購入で、中国を筆頭に海外勢による購入も目立ちます。
ほとんどは投資目的とみられ、賃貸物件として運用されているのは300戸以上。転売も続出しているほか、物置などのレンタルスペースとして貸し出す例や、部屋を細かく区切って住居用に貸し出す例もあると報告されています。
タワマンの“晴海フラッグ化”は、晴海フラッグだけで生じている問題ではありません。神戸市もタワーマンションが多いことで知られています。
そのため、神戸市は大学教授や弁護士らの専門家でつくる「タワーマンションと地域社会との関りのあり方に関する有識者会議」の場で、2024年5月から総合的なタワマン施策を検討してきました。その最終報告のなかで、同会議は対策の1つとして「空室税」導入を提言したのです。