全国に広がる廃墟化の懸念

 非居住による“廃墟化”の懸念は、タワマンに限ったことではありません。ブームが過ぎ去ったリゾート地のマンションや、低層であっても築年数が経過したマンションでは所有者の合意形成が難しくなっています。

 こうしたことから、政府や地方公共団体では、マンションの将来をどうすべきかを考えた施策が動きだしています。

 先陣を切ったのは東京都豊島区です。地域のマンションが廃墟マンションになる前に打つ手はないかと考え、2012年に「豊島区マンション管理推進条例」を制定し、 全国で初めて管理状況などの届出を義務化しました。

投資目的の購入が殺到した晴海フラッグ(写真:アフロ)

 その後、大都市圏の公共団体で追随例が続き、東京都も2019年に「東京におけるマンションの適正な管理の促進に関する条例」を制定しました。施設の老朽化と入居者の高齢化という「2つの老い」を乗り切るためです。

 この都条例では、1983年以降に建設された総戸数6戸以上のマンションに管理状況の報告義務を課しました。実際の届け出が始まったのは、2020 年から。対象となるマンションは約1万4000棟になるとされています。どのような対策を取るにしても、現況を把握しなければ何も始まらない、というわけです。

 目的タワマン高層階の非居住とは様相が異なりますが、非居住者だらけになって強制的に取り壊されたマンションもあります。その一例が滋賀県野洲市の全9戸の分譲マンションで、取り壊しは2020年のことです。このマンションには管理組合がなく、所有者も実際に住んだことのない人が大半。老朽化が進み、外壁や外階段が崩れ落ちても、修繕は行われていませんでした。

 当時の報道によると、野洲市は空き家対策特別措置法に基づいて区分所有者に解体命令を出しましたが、所有者の半数は行方不明だったそうです。最終的には行政による「代執行」で建物は取り壊されましたが、1人あたり約1300万円、総額1億8000万円に上る解体費用が所有者に対して請求されました。