2023年10月、ハマスのイスラエルに対する奇襲攻撃で戦争が始まった(写真:AP/アフロ)

2023年10月から戦争を続けてきたパレスチナ自治区ガザのイスラム組織ハマスとイスラエルが2025年1月19日からの停戦に合意しました。双方が合意を履行すれば、民間人を含め大きな犠牲を出した戦争に終止符を打つことも可能です。ただ、停戦合意後も戦闘が続いている地域があり、合意の行方は楽観視できません。どのような経緯で停戦が実現したのか、果たして中東に平和がもたらされるのか。「ガザ停戦合意」をやさしく解説します。

西村卓也:フリーランス記者、フロントラインプレス

3段階の合意内容

 今回の戦争は2023年10月7日、ハマスがガザの境界を越えてイスラエルを攻撃し、1200人余りを殺害したほか、約250人を人質に取ったことが発端です。イスラエルは即座にハマス掃討を掲げてガザに対し空爆と地上侵攻を開始しました。

 イスラエル軍の激しい攻撃で4万人を超すパレスチナ人が死亡、ガザの市街地はがれきの山と化し、約230万人の住民のほとんどが家を失って地区の内外に避難しました。支援物資が行き届かず、衛生環境も劣悪で、避難民の人権状況を懸念する声が世界中に広がりました。

 そうした激しい戦争が1年3カ月も続いたあと、ようやく双方は米国やカタールなどの仲介によって停戦合意にこぎつけたのです。

図:フロントラインプレス作成
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 合意の内容は3段階に分かれています。

 第1段階は1月19日からの6週間です。この間にハマスは2023年10月の攻撃で拘束した人質のうち女性や高齢者、病気の人などを解放します。イスラエルは犯罪者などとして刑務所に収容しているパレスチナ人の一部を解放します。

 互いの人質解放と並行し、イスラエル軍はガザ市街地を離れ、避難しているガザ住民が帰還できるようにします。ガザに1日600台のトラックを入らせ、救援物資を運べるようにすることにも合意しました。

 第2段階では、双方が恒久的な戦闘停止を宣言した上で、残りの人質を解放し、イスラエル軍はガザから完全撤退します。第3段階では、何年かかけてガザの復興を進めることにしています。停戦から16日目に第2、第3段階についての交渉を開始することにしていますが、第3段階である「復興」までの道筋は固まっていません。例えば、撤退したイスラエル軍はどこに駐留するのか、人質解放はどの範囲までを対象とするのかなど、不確定な要素も多く残っているのです。