停戦合意がすんなり進むか不透明
イスラエル政府は1月17日、停戦合意を正式に承認し、発表しました。全体閣議では、ネタニヤフ連立政権に加わる極右政党党首のベングビール国家治安相らが反対したものの、閣僚の多くが賛成しました。
ただし、停戦合意がすんなりと進むかどうかは不透明です。ハマスとイスラエルの考えには、今なお違いが残っています。

ハマスは人質解放の前に戦争の終結を約束するよう、イスラエルに要求していますが、イスラエルは難色を示しています。武装勢力がガザに帰還して再びイスラエルを攻撃するのではないかと警戒しているのです。
イスラエルにとって戦争の最大の目的はハマスを壊滅させることでした。1年3カ月に及ぶ戦闘でハマスの軍事部門は大きな打撃を受けましたが、組織全体の壊滅には至っていません。ネタニヤフ首相も戦闘の恒久停止には否定的で、人質解放が済んだ後に再び攻撃を開始できる余地を残そうとしているとみられています。停戦が実現しても、長年にわたるイスラエルとパレスチナの対立に終止符が打たれるという保障は今のところないのです。
停戦が第2、第3段階に進んだとしても、ガザの復興には何年もの時間がかかると予想されています。停戦合意をいかに実行するか。ハマス、イスラエルだけでなく、関係国が粘り強い関与を絶やさないこと、そして国連をはじめ国際社会による復興支援が今以上に不可欠になるでしょう。
西村 卓也(にしむら・たくや)
フリーランス記者。札幌市出身。早稲田大学卒業後、北海道新聞社へ。首相官邸キャップ、米ワシントン支局長、論説主幹などを歴任し、2023年からフリー。日本外国特派員協会会員。ワシントンの日本関連リサーチセンター“Asia Policy Point”シニアフェロー。「日本のいま」を世界に紹介するニュース&コメンタリー「J Update」(英文)を更新中。
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