ハマスのミサイルを迎撃するアイアン・ドーム=2023年12月1日(写真:ロイター/アフロ)

イスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの侵攻、イランのイスラエル攻撃、イエメンの反政府勢力・フーシ派によるイスラエル船舶への攻撃……。このところ、イスラエルをめぐる武力紛争が後を絶ちません。中東の不安定さは増すばかりですが、そんな情勢下で注目されているのがイスラエルの防空システム「アイアン・ドーム」です。アイアン・ドームを使ってイスラエルが敵のミサイル着弾を防いだといったニュースも頻繁に報じられています。いったい、どんな機能を持ったシステムなのでしょうか。フロントラインプレスがやさしく解説します。

フロントラインプレス

イスラエルが米国の支援を受け開発

 イラン革命防衛隊がイスラエルに対して大規模な攻撃を仕掛けたのは、4月13日のことでした。イスラエルのシリア空爆により、現地にいた革命防衛隊の司令官らが殺害されたことへの報復です。イランからは200発を超えるドローン(無人機)やミサイルが飛来しましたが、イスラエルは「アイアン・ドーム」で迎撃。空中で撃ち落とすなどしてイラン側兵器の99%を無力化したと報じられました。

 イランの攻撃も多分に政治的要素を含んでおり、十分に迎撃可能なタイミングで攻撃を仕掛けたとされていますが、そうだったとしても強固な防空システムが改めて高い評価を受けたのです。

 アイアン・ドームはイスラエルの有力軍需企業「ラファエル・アドヴァンスド・ディフェンス・システムズ社」(Rafael Advanced Defense Systems Ltd.)とイスラエル国防軍が米国の支援を受けながら開発した防空システムです。

 イスラエルはかねてガザやレバノンの武装勢力が発射する短距離ロケット弾攻撃などに悩まされていました。イスラエルと国境を接するエリアから飛来するため、迎撃までの時間もほとんどありません。そのため、射程100キロに満たない敵の攻撃に対して、どのように効果的な防空体制を構築するかが大きな課題だったのです。