脅威の命中率、主要都市を防衛

 アイアン・ドームが実戦配備された翌年2012年11月、早くもその威力を見せつける出来事が起きました。イスラエル軍とガザの武装勢力ハマスが互いにロケット砲弾などを撃ち合う激しい戦闘を展開。10日足らずの戦闘で、パレスチナ側では子どもを含め200人近い死者が出る惨事となりました。

 本格的な地上戦に突入する前に停戦しましたが、この戦闘の際、イスラエル側はロケット弾の大半をアイアン・ドームで迎撃したのです。当時の現地からの報道によると、ハマスは約1500発のロケット砲弾を発射し、そのうち約1300発がイスラエル領内に飛来しました。大半は人家のない場所に飛んでいきましたが、イスラエル軍は都市部に飛来した約500発のうち420発をアイアン・ドームで撃ち落としました。

ハマスの攻撃を迎撃するアイアン・ドーム=2023年10月8日(写真:ロイター/アフロ)

 命中率はおよそ9割。ミサイル防衛システムに関しては当時、一般向けにその難しさを「向かってくる弾丸をピストルで狙い撃つようなもの」と表現することがありましたが、その常識からすれば90%の命中率は驚異的という他はありません。

 アイアン・ドームはその後、随所に改良が施され、性能をさらに向上させたと言われています。イスラエル軍の発表では、各戦闘での命中率はほぼ95%に達しており、人口密集地での防御可能範囲は最大で155平方キロメートル。現在では計10基のアイアン・ドームがテルアビブやハイファなどイスラエルの主要都市に配備されています。