
トランプ米大統領がパレスチナ自治区ガザについて、住民を周辺国に移住させて米国が「所有」し、再建を図る考えを明らかにしました。イスラエルによるガザへの攻撃で4万7000人ものパレスチナ人が殺され、住宅やインフラも破壊し尽くされました。トランプ氏は生き残った人たちを立ち退かせ、自分たちがリゾート開発に乗り出すというのです。パレスチナ人やアラブ諸国は強く反発しています。どれほど荒唐無稽な提案なのか、ガザの歴史を振り返りながら、やさしく解説します。
不動産業出身ならではの発想?
トランプ氏とイスラエルのネタニヤフ首相は2月4日、ホワイトハウスで会談し、終了後、共同記者会見に臨みました。ガザ「所有」の提案が公になったのは、その会見でのことです。
提案によると、ガザ住民は近隣の「裕福な国」に移住させます。破壊された建物の取り壊しや、がれきの撤去、不発弾の処理は米国が担い、地中海のリゾート地リビエラ(フランス南部からイタリア北部)のように整備する構想です。トランプ氏は米軍を派兵する可能性にも言及し、米国の「長期的な所有」を打ち出しました。
不動産開発業出身のトランプ氏らしい案ではありますが、実現は疑問視せざるを得ません。
ガザは地中海に沿って細長く伸びる360平方キロの土地です。東京23区の6割くらいの広さしかありません。2023年10月に始まったイスラエルによる猛攻撃の前には、230万人が暮らしていました。その7~8割は難民です。
ガザ地区には8つの難民キャンプがありますが、最大のジャバリア難民キャンプでも広さはわずか1.4平方キロ。ここに26の学校、2つの診療所があり、11万人以上が身を寄せていました。
では、なぜパレスチナ人はこんな狭い場所で暮らすことになったのでしょうか。