
学校法人・森友学園(大阪市)に国有地を不当に安い価格で払い下げたとされる問題で、売却経緯を記した公文書を開示しない国を訴えた「森友文書非開示取り消し訴訟」。その裁判で大阪高裁はこの1月末、公文書の非開示は「違法」とする判決を下しました。一連の出来事をめぐっては、公文書の改ざんを指示された国家公務員がそれを苦に自死するという痛ましい経緯をたどっています。問題発覚からすでに8年。事案の記憶も薄れゆくなか、「森友学園問題」をイチからやさしく解説します。
国有地払い下げが疑惑の的に
森友学園問題が最初に大きな社会問題となったのは、2017年2月9日のことでした。朝日新聞が朝刊1面トップで「学校法人に大阪の国有地売却 価格非公表、近隣の1割か」という見出しの調査報道記事を掲載したのです。
売却されたのは大阪府豊中市の国有地8770平方メートル。財務省の出先機関・近畿財務局が2013年に売却先を公募し、2016年に森友学園に売却されました。ところが、地元市議の求めに対し、近畿財務局は売却額の公表を拒否。その後、朝日新聞の取材で売却額は約1億3400万円だったことが判明しました。
この価格が疑惑の的となります。なぜなら、この土地に隣接し、これよりやや広い程度の国有地は14億2300万円で豊中市に売却されていたからです。最終的には森友学園に売却された国有地の不動産鑑定価格は9億5600万円だったことが分かりました。
値引き額は実に8億2200万円です。値引きの理由は、地中から見つかった大量のゴミの除去費用だとされましたが、8割以上もの値引きに国が応じた背景には別の理由があったのではないか、との疑念が生じました。
その理由として浮上したのは、森友学園と当時の安倍晋三首相との特別な関係です。
学校法人の理事長・籠池泰典理事長はこの土地に「日本で初めての神道の小学校」を開設する予定でした。籠池氏は当時、憲法改正を求める日本会議・大阪の役員。日本会議は安倍氏の有力な支持母体だったことで知られています。
しかも籠池氏は開校予定の小学校の名称を「安倍晋三記念小学校にしたい」と公言し、名誉校長には安倍氏の妻・昭恵さんを迎え入れると語っていました。
こうした経緯から森友学園小学校の予定地は、安倍氏との特別な関係によって不当に安く払い下げられたのではないか、との見方が広がったのです。