改ざんの経緯・内容が記された「赤木ファイル」の存在
公文書の改ざんを命じられた赤木さんは、組織人として上司の命令に従うべきか、公務員として人としてどうあるべきか、悩み、揺れ動き、苦悩しました。その末の自死でした。そうしたなか、良心の呵責に耐えかねた赤木さんは、改ざんの経緯と内容を詳細に記し、職場のパソコンに残していたことが発覚します。これが通称「赤木ファイル」です。
赤木さんの妻・雅子さんはのちに、「赤木ファイル」の開示を求めて国を訴え、ファイルは2021年6月に開示されました。ファイルは全部で518ページ。財務省本省の理財局と近畿財務局の職員の間でやり取りされた多数のメール、改ざんを指示された箇所に目印を付けた本来の決裁文書などが整然と時系列で残されていました。実直で丁寧な仕事ぶりで知られた赤木さんらしいファイルでした。
それでもまだ“本丸”は残っていました。「誰が公文書の改ざんを命じたか」という財務省内の記録は一切明らかになっていなかったのです。そのため、本当のことを知りたいと願う雅子さんは情報公開法に基づき、国有地売却に関連する事件捜査で財務局側が東京地検・大阪地検に任意提出した文書の開示を求めたのです。
これに対し、財務省側は文書が存在するかどうもかも明かさない「存否応答拒否」の立場を取り、不開示決定をしました。「公にすることで犯罪の予防や捜査などに支障を及ぼす」という理由です。
それでも雅子さん側は諦めません。今度は、公文書を非開示とした財務省の決定はおかしいとして、裁判を起こしたのです。それが、今年1月30日に大阪高裁で控訴審判決が出た「森友文書非開示取り消し訴訟」です。
大阪高裁は非開示を「適法」とした一審・大阪地裁の判決を取り消し、地検の捜査も終結している以上、公文書の公開に支障はないと思われると判断。非開示は「違法」との判決を下したのです。
一連の問題に政府はどう対応するのでしょうか。