
中東のパレスチナ自治区ガザの住民を日本で受け入れ、医療や教育分野の支援を提供する案が浮上し大きな論争を招いています。地理的に遠く、日本とは無関係と思われていた難民の問題がにわかに身近な問題となったからです。難民や難民になりかけている人々に支援の手を差し伸べるのは、人道上当然のこととされていますが、そもそも「難民」とはどういう存在なのでしょうか。ガザ住民の日本受け入れの是非を考える前提として、「難民」をやさしく解説します。
石破首相の発言とは?
日本政府によるガザ住民の受け入れ検討は、2月3日の衆院予算委員会で浮上しました。
公明党の岡本三成政調会長の質問に対し、石破茂首相が「病気、けがをした方々を日本に受け入れられないか、いま、鋭意努力をしている」と明言したのです。
岡本氏は2017年の安倍政権下でシリア難民を留学生として日本に迎え入れた実例に言及し、「同様のプログラムを中長期的に実現してほしい。日本の教育を受け、大好きになってもらい、いずれリーダーとして地域を発展させる支援をお願いしたい」と発言。すると、石破首相は「どこの大学が受け入れてくれるか。シリアの例をよく参考にしながら、実現に向けて努力をする」と語ったのです。
この発言が伝えられると、インターネットメディアやSNSでは、賛否が渦巻きました。その多くは否定的なもので、滞在にかかる費用や子どもの教育費などで多額の財政負担を強いられるうえ、中東の紛争に日本が巻き込まれる恐れがあるというものでした。
タイミングも否定論に拍車をかけました。イスラエルとパレスチナの紛争の解決手段として、ちょうど米国のトランプ大統領がガザ住民をアラブの周辺国に移住させるという案を示したばかり。このため、石破首相の発言は、国際的には「パレスチナ人の強制移住」に手を貸すものと解釈されかねない、というわけです。
もっとも、石破首相の発言は唐突に飛び出したものではありません。2024年12月には、自民党や立憲民主党など超党派の国会議員でつくる「人道外交議員連盟」のメンバーが首相官邸を訪問。ガザの状況は危機的であるとして、国際的な枠組のなかで難民救済を継続するよう訴えました。さらに議連のメンバーは、世界保健機関(WHO)の要請も踏まえ、負傷したガザ住民らを日本も受け入れるべきだと迫ったのです。
仮にガザの住民を受け入れるにしても、どのような層の人たちなのか、規模はどのくらいなのかなどの詳細は明らかになっていません。それでも、難民受け入れは国際的な人道支援の一環という政府の考えに揺らぎはないようです。
では、そもそも「難民」とは、どのような人たちを指すのでしょうか。