欧州の規制当局はGAFAに代表される巨大ITに宣戦布告した(写真:JRdes/Shutterstock)

巨大IT企業を規制する動きが世界で急速に強まっています。「GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)」に代表される巨大企業の寡占化にストップをかける狙いで、欧州連合(EU)は今年3月に「デジタル市場法」の運用を始めました。日本も巨大IT企業を規制するための「スマホソフトウエア競争促進法案」を閣議決定。米国では司法省がGAFAを構成する4社すべてを優越的な地位を乱用しているとして提訴しています。日米欧を中心に進む巨大IT企業規制は、どんな姿になっているのでしょうか。やさしく解説します。

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EUが巨大IT企業に宣戦布告

  EUのデジタル市場法(the Digital Markets Act : DMA)は、巨大IT企業に対する世界初の包括的な規制と言われています。2022年11月に施行され、猶予期間を経て今年3月から実際の運用が始まりました。

 狙いはズバリ、GAFAです。検索大手のグーグル社(現在は持ち株会社「アルファベット」の傘下)、iPhoneやiPadなどデジタル機器と付帯サービスを展開するアップル社、世界で約30億人が利用するSNSなどを運営するフェイスブック社(現社名「メタ」)、そしてネット通販の世界最大手であるアマゾン・ドット・コム社。これら米国4社に代表される巨大IT企業による市場の独占を防ぐことに最大の狙いがあります。

 デジタル市場法の運用が始まった今年3月、欧州委員会の産業政策統括、ティエリー・ブルトン氏は「アルファベット社のGoogle Play、およびGoogle検索、アップル社のApp StoreおよびSafari、メタ社の有料モデル」などを列挙し、これらのサービスは同法に違反している恐れがあるとの声明を発表しました。

 EU域内の人口は約4億5000万人です。米国より大きい市場を開放することの重要性に言及しつつ、「それはあくまでも条件付きのことだ」とブルトン氏は主張。アルファベット社などの米3社は新法を順守するつもりがないようだとして、調査に乗り出すと公表したのです。EUによる巨大IT企業への“宣戦布告”でした。

 デジタル市場法は、巨大IT企業が欧州市場で支配的な地位を乱用し、公正な競争を妨げることを防止する目的で制定されました。この法律のもとでは、「EU内の月間ユーザーが4500万人以上」「域内の年間売上高が75億ユーロ(約1兆2000億円)以上」といった条件に当てはまる巨大IT企業が「ゲートキーパー」に指定されます。

 今回ゲートキーパーに指定されたのは6社で、対象となったプラットフォームサービスは22を数えました。その内容は次のページの図の通りです。