ラベル画像からアレルゲンを把握できるスマートフォンアプリ(写真:CAN EAT提供)ラベル画像からアレルゲンを把握できるスマートフォンアプリ(写真:CAN EAT提供)
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~ 中小企業の今とこれからを描く ~
日本政策金融公庫総合研究所では、中小企業の今とこれからの姿をさまざまな角度から追うことで、社会の課題解決の手がかりを得ようとしています。最新の調査結果を、当研究所の研究員が交代で紹介していきます。今回からの連載(全3回予定)では、中小企業のフードテックについて取り上げます。企業事例をもとに、初回ではフード業界の課題と事例企業の技術分野、第2回ではイノベーションを成功に導く発想、第3回では生活にもたらす便益を紹介します。

(篠崎 和也:日本政策金融公庫総合研究所 研究員)

期待が寄せられるフードテック

 近年、既存のビジネスや産業に先端テクノロジーを活用して新たな商品やサービスを生み出す「クロステック」が、トレンドとなっている。われわれの生活に欠かせない食の分野とテクノロジーをかけ合わせた「フードテック」は、注目度が高まっているカテゴリーの一つである。

 これまでフード業界は、成長性や生産性の低い領域であるととらえられてきた。加えて、近年は社会の構造変化に伴って、供給力の向上や持続可能な生産、担い手の減少への対処、多様化するニーズの充足などの解決が求められている。いずれも難題であるが、新たな技術の登場が解決を可能にしようとしている。

 他方、フード業界は食料品製造業や飲食店といった中小企業が多く活躍する分野でもある。また、技術やアイデアの発想に規模の大小は関係ない。ITや機械製造業など異業種からの参入もある。変革の担い手は決して大企業だけではない。

 当研究所は、先進的な技術でわれわれの食を豊かにしようと活躍する中小企業の事例調査を行った。本連載では、事例企業が取り組んでいる課題や技術の活用方法、得られた成果の一部を紹介し、イノベーションによる経営革新のヒントを示したい。

【興味のある方はこちらもご覧ください】

『フードテック -中小企業によるフード業界の変革-』|同友館オンライン 中小企業の強みを生かした発想でテクノロジーを駆使し、フード業界の難題に挑む12社の事例企業の取り組みから、課題解決のプロセスやわれわれの生活にもたらす便益を分析した一冊。フードテック -中小企業によるフード業界の変革-』|同友館オンライン 中小企業の強みを生かした発想でテクノロジーを駆使し、フード業界の難題に挑む12社の事例企業の取り組みから、課題解決のプロセスやわれわれの生活にもたらす便益を分析した一冊。

 事例に触れていく前に、フードテックが解決しようとしている課題を整理したい。ここでは、三つの「む」と三つの「不」にまとめた。