一人ひとりに最適な栄養を提供する
次に、ロボティクス・メカトロニクスの分野である。
ドリコス株式会社は、オーダーメードサプリメントサーバー「GRANDE」の開発と販売を行っている。
年齢や体重、脈拍といったヘルスデータや日々の食事内容といった生活データと、痩せたい、筋肉をつけたい、肌をきれいにしたいといったユーザーが設定する目標に合わせて、複数種類の栄養素の配合を最適化したサプリメントを、粉末状で提供する。いわばサプリメントのパーソナライズサービスである。主にスポーツジムに設置している。
市販のサプリメントの多くは、決まった量で販売されている。加えて、購入者が自分に必要な栄養素の量を把握するすべもなかった。そのため、栄養素によっては過剰に摂取したり、不足があったりしても、やむを得ないと考えられてきた。
しかし、同社のオーダーメードサプリメントサーバーを利用すれば、最適な量を摂取することが可能になる。また、利用者が設定した目標をクリアすると、サーバーがほめてくれるという機能がある。自身の体の日々の変化を、記録やサーバーからのコメントで実感することができるため、サプリメントを続けづらいという不満も解消したのである。
プラントベース食品が食の選択肢を広げる
最後に、バイオ・ケミカルの分野である。
グリーンカルチャー株式会社は、植物性の原材料でできたプラントベース食品を開発している。大豆やエンドウ豆などからハンバーグや餃子、酢豚などを再現している。
なかでも注目されている製品の一つが、「Green Meat」(グリーンミート)というミンチ状の植物肉である。見た目も味も本物の肉のようだと好評だ。
外部の専門機関に味を分析してもらった結果、牛肉、豚肉、鶏肉の平均に近い数値を示したという。味付け次第でどの肉の代わりとしても使えるのである。
健康や宗教上の理由などで肉や魚を食べない人は、制限がある分、楽しめる料理の幅も狭くなってしまう。プラントベース食品は、そうした人の不満を解消できる。
また、肉に比べてカロリーや脂肪、コレステロールが低く、健康に不安を感じている人にとってもメリットが大きい。
以上、IT・デジタル、ロボティクス・メカトロニクス、バイオ・ケミカルの三つの分野について事例企業の技術と解決している課題を説明してきた。ただし、技術があれば万事うまくいくわけではない。次回は、技術を導入する際のポイントを紹介したい。