三つの「む」

 一般に、企業が経営の合理化や業務の効率化を図る際、排すべきボトルネックとして挙がるキーワードではあるが、それがフード業界ではより深刻な課題となる。

①無理

 一つ目は、無理である。目的に対して手段が追いつかず、どこかに負荷がかかっている状態をいう。

 食品は生産地に偏りがあるため、遠隔地に輸送する必要が生じるケースが多いが、腐敗しやすい食品を遠方に運ぶのは簡単ではない。サプライチェーンに負荷がかかりやすいといえる。

 また、食品生産における機械化の難しさもある。飲食店における調理は、複雑で、丁寧さが求められることから、人の手によって行われることがほとんどである。生産量を増やそうとすると、作業をする従業員への負荷が大きくなる。

②無駄

 二つ目は、無駄である。需要に対して供給が上回り、商品が余っている状態をいう。

 例えば、企業による食品のつくりすぎである。ニーズが多様化するなかで、欠品を防ごうと過剰生産したり、大量陳列したりする結果、売れ残りが発生してしまうケースがある。

 また、食品を店頭に並べておける期間には限りがあり、需要を読み違えれば廃棄することになる。消費者としても、自身の適正な需要を見極めきれず、買いすぎてしまうことがある。

③ムラ

 三つ目は、ムラである。需要と供給のバランスにばらつきがある状態をいう。

 例えば、量のムラである。農林水産物の生産は気候や自然環境の影響を受ける。豊作もあれば凶作もあるため、供給を安定させることは難しい。

 また、販売側には、季節や行事などによって繁閑の波が発生する。需要が供給を大きく上回るタイミングもあれば、その逆もある。