たこ焼きを作るコネクテッドロボティクスの調理ロボット=長崎県佐世保市のハウステンボス(写真:共同通信社)たこ焼きを作る調理ロボット(写真:共同通信社)

~ 中小企業の今とこれからを描く ~
日本政策金融公庫総合研究所では、中小企業の今とこれからの姿をさまざまな角度から追うことで、社会の課題解決の手がかりを得ようとしています。最新の調査結果を、当研究所の研究員が交代で紹介していきます。前回に引き続きフードテックに取り組む中小企業について取り上げます。今回は、企業事例をもとに技術を導入する際のポイントについて整理します。

(篠崎 和也:日本政策金融公庫総合研究所 研究員)

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フードテックをいかに成功させるか

 前回は、フードテックが解決しようとしている課題について、三つの「む」と三つの「不」にまとめた。そして、独自の技術でそれらの課題を解決しようと取り組んでいる企業事例を「IT・デジタル」「ロボティクス・メカトロニクス」「バイオ・ケミカル」の技術分野からそれぞれ紹介した。

 ただ、技術があれば必ずしもうまくいくとは限らない。ここからは、中小企業がクロステックに取り組み、イノベーションを成功させるうえでポイントとなる五つの発想を紹介したい。

【興味のある方はこちらもご覧ください】

 『フードテック -中小企業によるフード業界の変革-』|同友館オンライン中小企業の強みを生かした発想でテクノロジーを駆使し、フード業界の難題に挑む12社の事例企業の取り組みから、課題解決のプロセスやわれわれの生活にもたらす便益を分析した一冊。

①チューニングの発想

 畑違いの分野から技術を持ち込む場合、そのまま使おうとしてもなかなかうまくいかない。対象とする業界や領域に合わせてうまく調整、つまりチューニングすることが重要である。試行錯誤が求められるプロセスだが、だからこそ、そこにオリジナリティや強みが生まれる。

 株式会社マゼックスは、農業用のドローンの製造販売を行う。日本の農地は小規模な田畑が多く、中山間地域にも広がっている。これに着目した同社は、小さな田畑を複数所有する農家をターゲットにドローンを設計した。機体をコンパクトにし、バッテリーや農薬を入れるタンクの容量を最適化した。

 また、周囲に林があったり、農地に起伏があったりする日本の中山間地域では、安全に飛行するために考慮しなければならないことが多い。その点では、自動運転より、人の目で確認しながら操縦した方が適しているともいえる。

 そこで同社は、真っすぐ飛ぶための進路補正や風で体勢が崩れたときに立て直す姿勢制御など、墜落を防止するための最低限の機能に自動化の領域を絞り、操縦は基本的に人の手で行うよう設計した。ドローンの低価格化にもつながり、小規模農家にも導入しやすくなった。

日本の農地に適した農業用ドローン(写真:マゼックス提供)