福井県若狭町でデキタ社が運営するアウトドア宿泊施設「山座熊川」(写真:デキタ提供)
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【前編はこちら】和歌山生まれの「アナウンサードローン」、開発したのは東京からの移転企業だった…じわり広がる企業の“脱首都圏”

(藤田 一郎:日本政策金融公庫総合研究所 グループリーダー)
<現・南関東創業支援センター 所長>

地方移転で「年商4倍」の企業も

 地方への移転で期待される効果として最もわかりやすいのは、地代家賃の削減である。だが、地方への移転は単なるコスト削減にとどまらず、売り上げの増加や人手の確保などにもつながっているようだ。

 前編で紹介した株式会社デキタは、東京から福井県若狭町へ移転してからは古民家を活用したシェアオフィス施設や宿泊施設を運営するなど、東京ではできなかった新たなビジネスにチャレンジしている。移転前に比べて年商は4倍に増えた。

 東京から和歌山県白浜町に移転したクオリティソフト株式会社は、IT企業でありながらITにとどまらない、さまざまなスキルをもつ人材を獲得している。

 本業とは一見関係なさそうに感じるが、実は重要な役割を果たしている。同社は、多才な人たちが集まることで、革新が生まれることをねらっている。

 働く側からすれば、ITのスキルがなくても自らのキャリアを生かして仕事を創造できる。同社の職場には、モチベーションの高い人材が集う。

 事例企業は移転先でそれまで少なかった、あるいはまったくなかった仕事を生み出している。だから人材を獲得できているのだろう。全国で人手不足がいわれるなか、移転先での人材の獲得は大きな成果といえる。