写真提供:日刊工業新聞/共同通信イメージズ
電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)などの電動化技術の向上を目指し、スズキは2025年11月、車載向け電池の性能評価を行う試験場を東京精密と共同で設立したと発表した。このスズキを世界的企業へと成長させた立役者が、鈴木修元社長である。2007年、大成功を収めていたインドを訪れ、生産・販売の現場を視察した鈴木氏。トヨタをはじめとするトップメーカーが次々にインド市場に参入する中、危機感を抱き、現場を引き締めるため、何をどう伝えたのか。『軽自動車を作った男』(永井隆著/プレジデント社)から一部を抜粋・再編集。同氏が異国の地で見せた経営トップのあるべき姿とは?
「これでデミング賞だと。ふざけるな!」
『軽自動車を作った男』(プレジデント社)
そして監査は生産現場だけではなく、販売現場であるディーラーのロハンモーターにも及んでいたのである。ロハンモーターは、スズキにとっては第一次顧客。スズキとロハンには何ら資本関係はない。
さらにラメッシュ・スリ会長は、自動車販売のほかにもエアコンメーカーを経営するインド経済界の名士。自動車販売では5店舗を有し、06年の販売台数は1万1434台(前年比7%増)だった。
鈴木修は店舗の奥の奥まで入っていく。その後ろを、スリ会長を筆頭に幹部たちがゾロゾロとついていく。さらにその後を、日本人の記者たちが追う。
「営業管理は紙ではなく、パソコンを使え。経費を削減できる」。バックヤードの整備工場ではさらにボルテージが上がる。
「いま、タイヤを拭いた布で、ボディーを拭いただろう。ダメだ! 車体が傷つく」、「電灯の位置が高い。お客様が増えて残業が多くなると夜間作業が増える。電灯を下げて見えやすくしなさい」、「検査施設を一カ所に集めなさい。検査から修理と流れる工程が直線になるよう、レイアウトを全部変えなさい」。
スリ会長らは一言も反論せず、全員が真剣にメモを取りながら、「すぐに直します」(スリ会長)とすべての指摘に即答していく。






