ダマスカスで、アサド大統領の父、故ハーフィズ・アル=アサド元大統領の破壊された胸像を踏みつける反政府軍の戦闘員(写真:AP/アフロ)
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(国際ジャーナリスト・木村正人)

「驚かなかったと言う人は正直ではない」

[ロンドン発]わずか12日間だ。国際テロ組織アルカイダの流れを汲むハイアト・タハリール・アル・シャーム(シャーム解放機構:HTS)率いる反政府軍がシリア北西部アレッポに進撃を始め、1971年から半世紀以上にわたってシリアを支配してきた悪名高きアサド独裁政権を瓦解させるまでの時間である。

「率直に言って驚かなかったと言う人は正直ではない。反政府軍も自らの進撃の速さに驚いた。奇襲を始めた時、彼らはもっと限定的な作戦を意図していた。しかし政府軍崩壊の速さに、できる限り前進しようと決意し、アッという間にダマスカスを陥落させた」

 米シンクタンク、ブルッキングス研究所中東政策センターのスティーブン・ヘイデマン氏は驚きを隠さない。ダマスカスは自らをアラブ世界の「鼓動する心臓」と呼ぶが、中東の地図を広げるとシリアは要であることがひと目で分かる。

 シリアは北大西洋条約機構(NATO)加盟国トルコ、米国の同盟国ヨルダンとイスラエル、4000人以上の米軍が駐留するイラクに囲まれている。レバノンや地中海の安全保障にとって生命線であるため、米国の敵対国ロシアとイランは数十年にわたってシリアを支援してきた。