イラクでフセイン政権が崩壊した時と同じように…

 バース党(アラブ民族主義政党)のアサド独裁政権が崩壊した時、シリアの人々はイラク・バース党の独裁者サダム・フセイン(1937~2006年)が倒れた時と同じように、独裁者バッシャール・アル=アサドの父で元大統領ハーフィズ・アル=アサドの像を引き倒し、歓喜を爆発させた。悪夢は繰り返されるのか。

シリアのダマスカスで、反政府勢力による市制圧2日目を祝い、革命旗を振り、スローガンを叫ぶシリア国民たち(写真:AP/アフロ)
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「シリアの人々が50年以上にわたる残忍な独裁政権から脱却することの意味を理解し始めるのを目撃している。シリアでは人々は学校で幼い頃から互いに信用してはいけない、隣人や家族でさえも国家の潜在的な敵とみなすよう教えられてきた」(ヘイデマン氏)

「両親は子供たちに家の外に出る時は言葉に気をつけるよう言ってきかせる。壁には耳があるのだから、と。このような独裁政権下での生活による集団的トラウマが薄れ、シリアの人々が自由な社会で暮らすことの意味を本当に理解するまでには長い時間がかかるだろう」(同)

シリアのダマスカスで銃を持った反政府軍戦闘員の隣に立ち笑顔で記念写真を撮る2人のシリア人女性(写真:AP/アフロ)
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 独裁政権から自由な社会への移行は失敗する可能性もはらんでいる。未来への興奮と期待、そしてこの先、乗り越えなければならない困難が数え切れないほど待ち構えている。

 それにしてもアサド政権を支えてきた政府軍はどうしてHTS率いる反政府軍と戦おうとしなかったのか。