ドイツのメルケル前首相が出した回顧録(写真:ロイター/アフロ)
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(国際ジャーナリスト・木村正人)

メルケル氏の回顧録『自由』

[ロンドン発]旧東ドイツで育ち、ドイツ初の女性首相として統一した祖国を16年間導いたアンゲラ・メルケル前首相(70)が回顧録『自由 記憶1954~2021年』の中で世界金融危機、欧州の債務危機、難民危機、ウクライナ紛争、英国の欧州連合(EU)離脱を振り返っている。

 米ワシントンの出版記念イベントではリベラルの盟友バラク・オバマ元米大統領がゲストに招かれた。だが国際社会の現状を見渡せば、人種・性差別発言を連発し、孤立主義、保護主義の傾向を強めるドナルド・トランプ米次期大統領が復活。ウクライナを侵略するウラジーミル・プーチン露大統領も息を吹き返す。

 世界では地政学的リスクが高まり、自由民主主義・リベラルVS権威主義・保守の対立が先鋭化、人種、ジェンダー、気候変動でも分断が深まる。リベラルの旗手だったメルケル、オバマ両氏はいまプーチンや習近平中国国家主席の拡張主義を止められなかった責任を問われている。

 英紙フィナンシャル・タイムズの辛口コラムニスト、ギデオン・ラックマン氏は「汚されたメルケル・オバマ時代の遺産」と題したコラム(12月2日付)で「ロシア、中国、シリアの侵略行為に対応できなかったことが今日の不安定な世界を作り出した」と批判している。