停車中の路線バス=イメージ(写真:Nobuyuki_Yoshikawa/イメージマート)
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全国で路線バスの減便・廃止が相次いでいます。路線バスの苦境と言えば、かつては利用者の少ない過疎地の出来事でしたが、近年は都市部にも拡大。昨年には東京23区内の人口密集地でも大幅な減便が行われました。背景には深刻な運転手不足があるとされています。地域に欠かせぬ「足」は、いったいどうなるのでしょうか。「路線バス危機」をやさしく解説します。

フロントラインプレス

路線バスで相次ぐ減便や廃止

「都営バスでは、路線の一部の運行を受託している株式会社はとバスの乗務員不足により、令和7年10月1日(水)に、以下のとおり減便を含むダイヤ改正を実施いたします。各バス停留所の時刻表につきましては、準備が整い次第、順次掲載してまいります」

 東京都交通局がこんなお知らせを発したのは、2025年9月のことでした。運行の委託先・はとバスが運転手を確保できず、減便に踏み切ったのです。路線バス事業への参入規制が撤廃されて以降、都営バスの減便は初めてです。対象は19路線・206便に達しました。その中には、次のようなターミナルと観光地・繁華街などを結ぶ都心部の路線も少なくありません。

◎目黒駅前―新橋駅前・東京タワー
◎品川駅高輪口―新宿駅西口
◎新宿駅西口―東京女子医大前
◎葛西駅前―秋葉原駅前
◎青戸車庫前―錦糸町駅前

 都営バスだけではありません。東京都内では2020年以降、京王バスや関東バス、京浜急行バスなどが相次いで路線バスの減便・廃止を実施しています。国土交通省・関東運輸局が2025年7月に公表したアンケート結果によると、管内の市区町村(有効回答312市区町村)のうち2024年12月末までの過去10年間に「減便・廃止された系統がある」と答えたのは、185市区町村に上りました。全体のおよそ65%という高い割合です。

 また、2025年1月以降に減便・廃止の「予定がある」は48市区町村を数え、比率も17%に達しています。

 しかも、こうした減便・廃止のおよそ6割は人口集中地区のものでした。また、路線バスの減便・廃止後に何も対策を取らなかった市区町村も、全体の6割に達しています。都会ではどんどん「路線バス空白域」が拡大しているわけです。

 関西も事情は同じです。象徴的だったのは2023年の金剛自動車(本社・大阪府富田林市)によるバス事業からの撤退。同社は大阪市のベッドタウンである富田林市とその周辺で路線バス事業を展開していましたが、運転手不足が著しく、19路線全ての休止を決めたのです。

 金剛自動車の社長は当時の記者会見で、減便で対応すれば収支がさらに悪化すると表明し、「この段階で撤退しなければ、もっと(経営が)大変なことになる」と苦しい胸の内を明かしました。

図表:フロントランプレス作成

 こうした結果、2023年度に廃止された路線バス距離の総延長は全国で2496キロにも及んだと「交通政策白書」(国土交通省・2025年版)は明記しています。前年度(1598キロ)の1.5倍。白書は「バス路線の廃止や減便が全国的に顕在化し、地域交通は危機的な状況」と言及するほどでした。