利用者減少×運転手不足×労働時間規制
では、路線バス危機は、なぜ生じているのでしょうか。
大都市圏への人口流入=地方の過疎化によって、地方のバス事業者はもともと苦しい経営を強いられていました。それでも2019年までは都市部・地方部を合わせた全国の路線バス輸送人員は年間4000万人前後で推移していました。
転換点となったのは、新型コロナウイルスによる2020年のパンデミックです。この年、全国に「外出自粛」が広がり、輸送人員は一気に3000万人を割り込みました。その後、実績は次第に回復したものの、輸送人員は3000万人台前半に留まり、コロナ前には遠く及びません。
運転手の不足も極めて深刻です。
全国のバス運転手は、ドライバーの高齢化や他業種に比べて低い賃金などが影響し、慢性的な不足が続いていました。そこにコロナ禍による路線バスの減便・廃止が起き、全国で数千人単位の運転手が離職したとされています。
日本バス協会の試算によると、2022年レベルのサービスを維持するために必要な運転手は全国で12.9万人。これに対し、2024年は10.8万人しか確保できず、2万人以上の不足が生じました。
運転手が集まらない背景には、待遇の問題があります。
厚生労働省の賃金構造基本統計調査(2024年)によると、バス運転者の平均年齢は55歳で全産業平均より11歳も高くなっています。しかし、平均年収は463万円。全産業平均より64万円も低いうえ、労働時間は16%も長くなっています。このため、人の命を預かるという重責に見合っていないとの指摘は消えることがありません。
「2024年問題」と呼ばれる労働時間の規制も無視できません。これは、2019年に施行された「働き方改革関連法」の段階的実施によるもので、バス運転手には2024年度から適用になりました。
新ルールでは、年換算で3380時間以内だった拘束時間は3300時間へと減少。時間外労働も月45時間・年360時間という上限が設定されました。これにより、運転手不足がさらに深刻化したのです。
国土交通省のまとめでは、路線バス会社の7割ほどが赤字経営です。運転手不足が響いて事業の現状維持も難しい状況は、簡単に打開できそうもありません。