オンデマンド型や住民参加型など知恵絞る
路線バス危機を救おうという動きも、あちこちで出始めています。
金剛自動車がバス事業から撤退し、路線バスの消えた大阪府富田林市周辺では、地域の足を守ろうと、地元自治体が中心になって廃止路線と同じ一部のルートでコミュニティ・バスを走らせています。同様の試みは全国の各地で実施。車体を小型化してコストを削減するなどの工夫を凝らし、住民サービスを止めない努力を続けています。
そのほか、利用者の事前予約に基づく「オンデマンド型交通」(予約型乗り合いタクシー)なども各地で行われるようになってきました。地域住民らによる「支え合い交通」(自家用有償旅客運送)という試みも見逃せません。
広島県三次市川西地区で行われている「支え合い交通」は、地域住民と行政、そして自動車メーカー・マツダの三者が一体となって運営。免許を持たない人や高齢者を対象にした移動支援サービスとして2018年からスタートしています。利用者は電話やアプリを通じて送迎を予約すると、地域の自治会が予約を取りまとめてドライバーを手配します。
ドライバーも地域住民で、1回1000円の手当てで運行。マツダは、運行管理を行うクラウドサービスやアプリ、安全技術を搭載した車両を提供しています。
一方、運転手不足を解決するため、外国人に門戸を開く制度も始まりました。政府は2024年、新しい在留資格「特定技能」に自動車運送業(トラック、バス、タクシー)を追加することにしたのです。
この枠の外国人は来日後、日本の運転免許証に切り替え、旅客運送に必要な2種免許を取得しなければなりませんが、バス会社ではインドネシア人などを運転手として雇用する動きがすでに始まっています。
ただ、こうした試みをいくら積み重ねても、路線バス危機には“焼け石に水”かもしれません。民営バス会社の労働組合でつくる「私鉄バス専業組合連絡協議会」が2025年6月に加盟労組を対象にアンケートを実施したところ(回答144労組)、運転手不足との答えは133労組・92%に上りました。
各メディアの報道によると、同協議会は運転手不足の現状を「危機的」と指摘。他の産業と比較して賃金が低い状況は根本にあるとし、国の積極的な関与で待遇改善を図るべきだと訴えています。
フロントラインプレス
「誰も知らない世界を 誰もが知る世界に」を掲げる取材記者グループ(代表=高田昌幸・東京都市大学メディア情報学部教授)。2019年に合同会社を設立し、正式に発足。調査報道や手触り感のあるルポを軸に、新しいかたちでニュースを世に送り出す。取材記者や写真家、研究者ら約30人が参加。調査報道については主に「スローニュース」で、ルポや深掘り記事は主に「Yahoo!ニュース オリジナル特集」で発表。その他、東洋経済オンラインなど国内主要メディアでも記事を発表している。高田氏の近著に『調査報道の戦後史 1945-2025』(旬報社)がある。