高層階ほど「空室」、円安で中国・台湾などアジアの富裕層殺到
タワマンの施設やコミュニティをどう持続させるかという課題を中心に話し合いが続きました。そのなかで中心課題となったのが、非居住者への対応です。
タワマンでは一般的に、高層階にいくほど住民登録のない部屋の割合が高くなることが知られています。実際には居住せず、投資やセカンドハウス目的で所有するケースが続出するのです。神戸市も同様です。
有識者会議の公表資料によると、2024年5月時点で神戸市のタワマン64棟(高さ60メートル超)・総分譲戸数1万1216戸のうち、住民登録のない部屋の割合(空室率)は平均16.6%でした。ところが、階層が上になるにつれ、空室率は上昇。20〜29階では19.3%、30〜39階では21.2%。40階以上になると、空室率は33.7%に跳ね上がりました。
全国調査でも40階以上の空室率は37.8%に達するなど、神戸市とほぼ同じ傾向を示しています。長期的な円安トレンドの影響を受け、中国や台湾などのアジア勢を中心に日本の高層マンションを投資目的で購入する例が長く続いているのです。神戸市の調査でも、高層階の区分所有者には、遠隔地に住む富裕層や法人が目立ちました。
こうした続くと、タワマンの施設やコミュニティの持続が困難になる、というのが有識者会議の結論でした。非居住者が増えると、住人による合意形成が難しくなります。修繕積立金が十分に確保できず、実際に入居している人の負担が増える恐れもあります。そうした結果、将来の大規模な修繕工事などが困難になると警告したわけです。
空室税の提言に至る議論では、会議の委員から「法令上、所有者はタワマンに住む義務がない。『住んでいない』ことで負担を求めるのが適切か」といった慎重意見も出ましたが、「非居住が増えると、合意形成の障害となり、将来的に廃墟化を招く」「非居住でも一定の行政コストがかっている。まちづくりの観点からエリア全体の価値を上げるため、コスト負担などを求める必要がある」といった声が大勢を占めました。