
優秀なビジネスパーソンほど陥る罠がある。効率を追求し、タスクを完璧にこなそうとするほど、時間に追われ続ける。まるで沈没船で必死に水をかき出すように…。英国ジャーナリスト、オリバー・バークマンが『限りある時間の使い方』(高橋璃子訳、かんき出版)で説く「宇宙的無意味療法」とは? 「あなたのすることに大した意味はない」。この絶望的な真実が、なぜ私たちを解放するのか。
余白のないスケジュール帳を見て覚えた一抹の不安…
『限りある時間の使い方』(オリバー・バークマン著、高橋璃子訳、かんき出版)
今回は、私が関わっているクライアントの社員のエピソードから始めてみたいと思う。その当事者の名前は、仮に安田としておこう。
彼はとても優秀であり、若くして大企業の部長に抜てきされた同期のエースだった。誰よりも責任感が強く、常に「あるべき姿」から逆算して行動する特徴があった。
例えば中期経営計画のように中長期のマイルストーンが提示されると、その目標を達成するために、今期何をすべきか、そしてそのために月単位、場合によっては週単位で何をすべきかを考え抜き、それを確実にやり遂げてきた。
かつて彼のスケジュール帳を見せてもらったことがあるが、そこは「将来からの逆算」によって導き出されたタスクで、隙間なく埋め尽くされていた。それを目にした時、一抹の不安を覚えた。確かに仕事はできる人なんだろう。しかし、「効率性を高めていけば自分にできないことはない」という彼の信念はいつまで続くのだろうか…とぼんやり思ったのだった。






