市場では、日銀が追加利上げするとの観測が強まっている(写真:ロイター/アフロ)市場では、日銀が追加利上げするとの観測が強まっている(写真:ロイター/アフロ)

 長期金利の指標となる新発10年物国債の利回りは1.400%と約15年ぶりの高水準になった。2月に公表された国内企業物価指数(PPI)も騰勢を強めており、いずれ消費者物価指数(CPI)にも波及するのは確実だ。さらに、円安の影響で円建ての輸入物価指数は上昇圧力を強めており、円安インフレの再来は間近に迫っている。金利上昇によって日銀の利上げ観測が日増しに強まっているが、果たしてどうなるだろうか。(唐鎌 大輔:みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト)

経済の上流で高まるインフレ圧力

 2月18日の国内債券市場で、長期金利の指標となる新発10年物国債の利回りが一時1.400%と2010年4月以来、約15年ぶりの高水準まで上昇している。円安インフレに呼応するように、日銀が利上げに踏み切るとの観測は日増しに強まっており、為替市場も円金利を睨みながら荒っぽい値動きを強いられている。

 目先の金利・為替動向はさておき、今後の日銀の政策運営を検討する上では円建ての輸入物価指数の動きを把握しておくことが有用になるだろう。

 いくら国民や市場参加者の体感として円安が騒がれても、国内物価への波及が限定的であれば金融政策を動かす理由にはならない。一方、円安の動きが穏当であっても、前年比で見た円建て輸入物価が押し上げられるような状況は国内のインフレ圧力に直結するため、金融政策を動かす理由になる。

 この点、2月13日に公表された1月の国内企業物価指数(PPI)は興味深いものであった。まず、1月のPPIは前月比+0.3%、前年比+4.2%であり、特に前年比変化率に関しては前月(12月)から+0.3%ポイント加速していることが目立った。+4%台のPPIは、2023年6月以来の大きさである。

 政府による燃料油補助金が縮小されたことで石油・石炭製品のプラス寄与が存在感を高めたが、米価格を中心に高止まりしている農林水産物への寄与も無視できないものになりつつある。

 図表①に示されるように、物価の上流とも言えるPPIは過去1年間で明らかに騰勢を強めており、真っ当に考えれば下流に位置する消費者物価指数(CPI)の上昇圧力も避けがたいものになっていくと予見される。

【図表①】

消費者物価指数(CPI)と企業物価指数(PPI)の推移