
2月7日に開催された日米首脳会談では、対米投資残高を1兆ドル規模に引き上げることなどが表明された。今回の日米首脳会談の論点は、為替市場にどのような影響を与えるのか。気鋭のエコノミストが整理した。(唐鎌 大輔:みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト)
直感的な印象は円買いではなく円売り
2月7日に開催された日米首脳会談では、安全保障や経済に絡んで多数の論点が話し合われた。
金融市場では「とりあえず懲罰的な関税措置を押し付けられなかった」という点が好感されているように見える。「主要通貨の中では相対的にトランプ課税の被害が小さい」という理由で買われていた円は、引き続き同じ理由で堅調な地合いにある。
為替需給への影響に照らしてヘッドラインを整理すると、①日本による対米投資残高を1兆ドルに引き上げること、②日本による米国産LNG(液化天然ガス)の輸入拡大、③日本による10億ドル分の防衛装備品の購入、④日本企業(自動車、IT)による対米投資計画の伝達といった論点が挙げられる。
直感的な印象は、決して円買いではなく円売りである。
報道を見る限り、会談は平和裏に終わったと察するが、トランプ大統領は「対日貿易赤字を解消したい」と明言しており、基本的にトランプ政権の主張を叶えていけば円売り圧力は強まるはずだ。
ヘッドラインで目立った①「日本による対米投資残高を1兆ドルに引き上げること」の規模感を整理しておこう。
日本の対米投資残高は、実績が確定している2023年末時点で7833億ドルのため、日本による対米投資残高1兆ドルは、差額である約2200億ドルの積み上げを目指すという話である。言い換えれば、直接投資を通じてこの規模感の円売り・ドル買いを約束したことになる。