
トランプ政権による追加関税によって金融相場は関税相場の様相を呈している。今のところ日本は対岸の火事だが、米国に対する巨額の貿易黒字を考えれば、日本が追加関税に被弾する可能性も十分にある。日米首脳会談で、石破首相はトランプ大統領をどのように説得すべきなのだろうか。(唐鎌 大輔:みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト)
「関税相場」と化した金融市場
金融市場は関税相場の様相を呈している。
まず、2月1日にメキシコとカナダに対して25%、中国に対して10%の追加関税を課す大統領令に署名が行われた。これを受けた3日の金融市場は大荒れとなり、日経平均株価指数も前日比▲1000円以上の下げを強いられた。
しかし、2月4日から発効予定だったメキシコおよびカナダ向けの関税は1カ月間の実施延期が決まった。メキシコは、米国の求める合成麻薬フェンタニルおよび不法移民の流入対策として、(メキシコが)1万人の警備隊を配置することで延期を勝ち取った格好である。
カナダも同じように国境管理の強化を企図して1万人の警備隊を配置した上で、フェンタニル流入対策の責任者を任命することなどを約束し、やはり延期を勝ち取っている。
片や中国には4日、予定通り、10%の追加関税が課されており、中国はこれに報復関税を課す方針を発表。10日から発効の予定と報じられている。
こうした中、本稿執筆時点の日経平均株価指数はメキシコ、カナダへの追加課税延期が好感され反転しているが、暴落から値が戻っているわけではない。
トランプ大統領は2月中旬頃を目途に、半導体、医薬品、鉄鋼、アルミニウム、銅、石油・天然ガスに関連する関税措置を検討しているとも報じられている。メキシコやカナダに対する追加関税の延期期限である1カ月後はもちろん、今後も紆余曲折が不可避で、ファンダメンタルズよりもヘッドラインが優先される時間帯が続きそうだ。