
1月末に開催されたFOMC(米連邦公開市場委員会)では、市場の予想通り政策金利を据え置いた。ドル安・低金利を志向するトランプ大統領の存在はあるものの、堅調な米国経済を背景に、市場の注目は「利下げの終わり」に集まりつつある。(唐鎌 大輔:みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト)
6月まで利下げはなし。堅調過ぎる米国情勢
1月28~29日に開催されたFOMC(米連邦公開市場委員会)は市場の予想通り、政策金利であるFF金利誘導目標を4.25〜4.5%で据え置いた。12月に更新されたメンバーの政策金利見通し(ドットチャート)では、2025年中の利下げが2回とされているが、市場の織り込みもほぼこれに沿っており、当面の政策変更は想定されていない。
FRB(米連邦準備理事会)のパウエル議長が会見で述べた「経済が堅調であるため、金利を調整するにあたって急ぐ必要はない」という言葉に従うように、3月や5月も現状維持を見込む向きが支配的である。
もちろん、この間にも不測の事態は頻発するであろうが、現状では利下げを促すような基礎的経済指標に乏しいのは間違いない。
事実、政策判断の要諦となるインフレ指標は総合で見ても、基調で見ても2%付近で下げ止まり、反転し始めているように見受けられる(図表①)。
【図表①】
その背景には、依然として堅調な雇用・賃金情勢があり、平均時給もやはり反転の兆しが見受けられる(図表②)。
【図表②】
軍用機を用いた移民の強制送還が実行に移される中、労働供給制約は強まる見込みであり、パウエル議長も「国境を越える人の流れは非常に大きく減少しており、今後もそれが続く」「例えば建設業で移民の労働力に頼っている企業が、急に人を集めにくくなっている」と労働需給逼迫に警戒感を覗かせている。