今世紀の終わりには、世界の人口構成は大きく変わり、サハラ以南の人口が世界の3分の1を占める(写真:AP/アフロ)今世紀の終わりには、世界の人口構成は大きく変わり、サハラ以南の人口が世界の3分の1を占める(写真:AP/アフロ)

 人口を維持できる水準(人口置換水準)である合計特殊出生率(ひとりの女性が生涯に産む子供の数)が2.1を割る地域は、既に人口換算で世界の3分の2に上る。この水準が続けば、今世紀末までに先進国の人口は20%から50%も減少し、労働人口に至っては2050年には先進国と中国で総人口の59%まで落ち込むという予測をマッキンゼー・グローバル・インスティテュート(MGI)が出した。

 世界に先駆けて高齢化が進む日本は途上国からの移民に頼ればいいと安易に考えがちだが、この報告書によれば、サハラ以南のアフリカを除く他の地域も、1世代か2世代遅れて同じ人口減少に直面するため、世界中で働く若者が不足する事態になる。世界的人口減少とは何か。対策はあるのか──。共同執筆者のひとりであるAnu Madgavkar(アヌ・マドガフカー)さんに聞いた。(聞き手:草生 亜紀子、フリーライター)

人口減少の3つの波

 まずは、報告書の人口減少に関わる部分を簡潔に紹介したい。

 2023年、世界の出生率平均は2.3でかろうじて人口置換水準を超えている。だが、世界人口の3分の2が暮らす先進国の多くと中国がこの水準を割って久しく、韓国は0.7まで落ち込んでいる(MGIのウェブ会議では、「2024年、韓国では乳幼児用バギーよりも犬用カートが売れた」というエピソードが紹介された)。

1950年から2023年の出生率を色分けした地図(出所:マッキンゼー・グローバル・インスティテュート、以下同)

 こうした現象は先進国の特徴と考えられてきたが、新興国でも同じような人口減少が急速に進んでいる。たとえば、ブラジルでは1960年には6.1だった出生率が2023年には1.6に急落した。一方で世界の平均寿命は1997年に比べて7年延び、2050年には77歳になると予想される。

 出生率が下がって寿命が延びて社会の高齢化が進めば、労働人口の減少が起きる。報告書は経済に大きな影響を及ぼす労働人口の減少は3つの波(労働人口が増加し、ピークを迎えて減少に転じるため波の形になる)で起きると予測する。