ホスピタリティのあふれる接客はだんだんと高くなりつつある(写真:Rawpixel.comshutterstock)ホスピタリティのあふれる接客はだんだんと高くなりつつある(写真:Rawpixel.comshutterstock)

「レストランやホテルなど、日本のサービス業の質が劣化している」という声が挙がっている。昨年、X(旧Twitter)で注目を集めた店員のセリフ「私、タイミーなのでわかりません」は、これからの時代のサービスのありかたを予感させると話題になった。

 上質なサービスを提供する日本の「おもてなし」は、もはや過去のものなのか。日本の「ポンコツ化」は避けられないのだろうか。「ひふみ投信」などを手がけるレオス・キャピタルワークスの藤野英人氏に話を聞いた。【前編】(聞き手:篠原匡、編集者・ジャーナリスト)

キレる客、開き直る店員

──サービス品質の劣化について、ご自身の体験をSNSに挙げていました。

藤野英人氏(以下、藤野):1カ月半ほど前に引っ越しをした時のことです。とある引っ越し業者の対応に衝撃を受けました。

 営業マンは段ボールを持ってくる日を間違え、指示しておいたモノは持ってきてくれない。それなりに高いプランを発注していたのですが、サービス内容がどれもデタラメな感じでした。

 実は、2年前にも同じ引っ越し業者に依頼して、その時は作業内容から接客態度まですべてにおいて「感じがいい」印象でした。それで今回も同じ業者に依頼したのですが、今回はサービスがとんでもなく劣化していました。それなのに、値段は2割くらい上がっている。インフレと人手不足の影響です。

──それは災難でしたね。

藤野:つい先日も同じようなことがありました。とあるしゃぶしゃぶのチェーン店に行ったのですが。注文を取りに来ない、間違ったメニューが運ばれる、指摘しても謝らないなど、店のオペレーションが完全に崩壊しているんです。

 周りのお客さんは、店員に完全にキレまくり。むしろ僕は店員のほうが気の毒になりました。

 というのも、店は明らかに人手が足りていませんでした。おそらく店員の一部は「タイミーさん」のようなスポットワークだったのでしょう。当然、こうした店員は、客から怒られても「なんで自分が怒られなきゃいけないんだ」という気持ちになると思います。

「タイミー」で50回副業したおじさんに聞いたリアルな感想(JBpress)

 こうしたサービスの劣化は、日本だけではなく世界中で起こっています。原因は、先ほど申し上げたようにインフレや労働力不足。ただ、日本の場合、それが同時に起こっている。

──なぜサービスの現場で労働力不足が深刻化しているのでしょうか。