3月27日、記者会見して「解散命令は明らかに不当だ」と訴えた世界平和統一家庭連合の田中富広会長(写真:つのだよしお/アフロ)

(作家・ジャーナリスト:青沼 陽一郎)

刑事事件を引き起こしていない旧統一教会に下された解散命令

 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に解散命令が出た。

 3月25日、東京地方裁判所が宗教法人法に基づく解散命令の決定をした。一昨年10月に文部科学省が東京地裁に請求していた。

 宗教法人の解散命令の要件は、宗教法人法の第81条で「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと」とあり、東京地裁は教団のこれまでの献金勧誘行為が民法上の不法行為にあたり、「法令違反」であって、この解散要件に該当すると判断した。

 法令違反による解散命令は、オウム真理教などについで、これで3例目になる。

 地下鉄サリン事件などを引き起こし、宗教法人というよりはテロ組織と呼ぶべきオウム真理教は、教祖をはじめ幹部信者が刑事訴追され、13人の死刑判決が確定し、既に執行されている。このうち、サリン製造を企てた殺人予備行為が、第81条に該当するとされた。

 2例目の「明覚寺」事件は、無料相談などで人を集めては「霊視」を行い、「水子の霊がついている」「先祖の霊のたたりだ」などと脅し、供養の見返りに高額を請求。教団トップや幹部が詐欺の疑いで摘発され、実刑判決を受けた。2002年に解散命令が出ている。

 いずれのケースも、教団の組織ぐるみとも言える刑事事件が解散要件に該当したが、今回は刑事事件ではなく、民法上の不法行為も解散要件に該当すると判断されたことに特筆性がある。

 だが、東京地裁が認めた不法行為の内容を知れば知るほど、もはや組織犯罪と呼びたくなる内容だった。なぜ、ここに至るまで解散が請求されなかったのか、後悔が残る。