こうしてみると、「明覚寺」のケースと照らしても、組織犯罪として立件されなかったことのほうが不思議なくらいだ。
決定では、約40年間に民事判決、和解や示談を含めて計約1560人に約204億4800万円の被害があったとしている。なぜここまで、旧統一教会を野放しにしてきたのか。
十分解明されたとは言い難い自民党との関係
1980年代から90年代にかけて、旧統一教会の霊感商法やタレントが参加した合同結婚式が社会問題化した時期があった。ところが、それにもましてオウム真理教が世間の耳目を集めるようになると、やがて地下鉄サリン事件を引き起こして、すっかり旧統一教会の姿をかき消してしまった。そうした事情もあっただろう。

しかし、ここまで組織的な献金勧誘の不法行為が指摘できるようであるならば、やはり組織犯罪として立件されてもおかしくはなかったはずだ。そうできなかった事情がどこかにあるのだろうか。
安倍晋三元首相襲撃事件によって、表沙汰になった自民党と教団との関係。旧統一教会の韓鶴子総裁を賛辞する安倍元首相のビデオメッセージの姿。自民党は調査を徹底して教団と絶縁したとはいうが、その後も過去に教団から支援を受けていたという政治家がリークされている。違和感だけが残る。
ようやく解散命令にまでたどり着いたが、これですべてが解決したわけではない。宗教法人として法人の資格を失うだけであって、任意団体としての宗教活動、あるいは献金、勧誘活動は続けられる。それはオウム真理教のその後を見れば、よくわかる。その後継団体は教団の引き起こした事件の被害者賠償を逃れようと、資産隠しが問題となっている。旧統一教会も同じように、任意団体として先鋭化し、さらに活発な献金勧誘活動を続けながらの資産隠しがはじまる可能性も否定できない。いや、むしろこれを宗教弾圧と捉えて、反社会性を増す懸念すらあるのだ。