同時多発的に広がっている「ポンコツ化」

藤野:一つはコロナの影響です。

 コロナ前まで、ホテルやレストランなどで働く人はあまり高くない賃金の中、頑張ってご自身の職責を果たしていました。ところが、コロナ禍によって飲食業や宿泊業の仕事が消滅すると、介護や福祉などもう少し単価の高い業種に移ってしまいました。コロナ禍が終わっても、この人たちは戻ってきていません。

 もう一つは少子化です。少子化に伴う労働力不足については、ここに来て急に始まったわけではなく、20〜30年前から続いている傾向です。ただ、シニアの労働参加と女性の社会進出が少子化に伴う労働力不足を補うことができたため、そこまで問題にはなっていませんでした。

 30年くらい前まで、シニアの方々は55〜60歳あたりで隠居していましたが、今は60~80代の人でも働いていますよね。

 また、女性はかつて25歳くらいに寿退社して35歳くらいまで家庭に入り、子どもが少し大きくなってからパートに出るのが普通でした。でも、今は子どもが生まれて1年くらいで職場復帰していますし、女性のフルタイム就労も増えています。

──私の母親(78歳)がまさにそうでした。

藤野:ちなみに今、国民民主党が「103万円の壁」の引き上げを主張していますが、この議論は女性の就労人口を増やす意味でとても重要です。あまり指摘されていませんが、女性の中には103万円の壁のせいで働き控えをする人が実際にいます。

 ところが、こうしたシニアと女性の労働参加はほぼほぼ終わりつつあります。そうなると、あとは外国人労働者に頼るしかありません。

 そこで、「タイミ―」や「メルカリハロ」のような単発で働く人を募る「スポットワーク」が登場しました。これは社会の変化を受けた動きですが、スポットワークで現場の手数が補えたとしても、あくまでスポットですから教育水準が一定にならず、ロイヤリティも上がりません。結果的にサービスの質が劣化してしまう。

 ただし、こうしたサービスの劣化は日本だけの問題ではなく、今世界中で起こっていることです。

「日本はポンコツ化しつつある」と語る藤野英人氏「日本はポンコツ化しつつある」と語る藤野英人氏