最近の音楽業界で注目を集めるのは、米ビルボードのヒットチャートにランクインしたYOASOBI、Creepy Nutsなど、グローバルで成功するアーティストたち。ネット時代、SNS時代のマーケティングは従来からどう進化しているのか? 本連載では『令和ヒットの方程式』(博報堂DYグループコンテンツビジネスラボ/祥伝社)から内容の一部を抜粋・再編集し、ヒットコンテンツが生まれる時代背景やメカニズムを解説する。
第3回は、ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」と星野源「恋」のヒットの事例に注目。大ヒットコンテンツは、SNSとUGC(ユーザー生成コンテンツ)によって、いかに生み出されたか。
「作品そのものではない情報」 がヒットを生み出す可能性
■「恋ダンス」でヒットした「逃げ恥」と《恋》
コンテンツビジネスラボでは、音楽ストリーミングサービスが普及し始めた2016年頃から大ヒットと呼ばれるような映画、ドラマ、音楽、ゲームのヒット現象が起きる際に次のような仮説を提唱した。
「コンテンツの作品そのものではない情報が、コンテンツ消費のきっかけになる機会を作っているのではないか」
ここで言う「作品そのものではない情報」とは、たとえば、作品周辺の小ネタ(裏話や出演者のエピソード、制作秘話など)やエンディング映像・WEBニュースや作品、有識者による作品の批評や周辺情報を指す。
生活者自身が作品の評価や作品自体に関連するネタ投稿を行うUGC、自分が見た作品やコンテンツに関して自分なりの感想をインターネットやSNS等でシェアされる口コミ情報なども含まれる。
我々はそうしたコンテンツの付帯情報を 「フィードコンテンツ」と名付けた。「フィード」とは、直訳すると「餌(えさ)・食べ物」で、ここでは“思わず生活者が食いついてしまうような情報”をイメージしている。