2022年、国内で初めて「AWS Mainframe Modernization」を採用したプロジェクトを開始し、2024年下期で全てのレガシーシステムを停止・削除して脱メインフレームを完了する明治グループ。執行役員グループDX戦略部管掌の古賀猛文氏が語る、モダナイゼーションとその土台となったシステム再構築の歩み、その先にあるDXの展望とはどのようなものだろうか。
※本稿は、Japan Innovation Review主催の「第22回 DXフォーラム」における「特別講演:明治ホールディングス DXの取り組み/古賀猛文氏」(2024年9月に配信)をもとに制作しています。
経営統合を経て整備してきたITインフラとDX推進体制
2009年に明治乳業と明治製菓が経営統合し、新たなスタートを切った明治グループ。統合前のIT組織体制は、アウトソーシング型の明治製菓、自社開発主導型の明治乳業というように大きく違っていたが、検討の結果、競争環境において優位性のあるIT組織構築を目指して、自社人財を育成する方向へかじを切った。
一方、IT環境は1990年代のメインフレームが中心だったところから、2000年代にはMES※や庫内作業など生産現場を支援するシステムが増加。さらに、社内を常時つなぐITインフラやネットワーク、情報セキュリティーなど、IT組織が対象とすべき範囲は広がっていった(下図)。
さらに2010年代以降には、ガバナンスの観点から海外を含めたグループ全体におけるITの統括・支援へのニーズが増大。また、デジタルを活用してビジネスを変革する、DXに求められるITを整備する必要もあった。これに応えるかたちで、明治に設置されたデジタル推進本部を、2011年には明治ホールディングスへと移管した。
「私たちは経営統合や事業再編を経ながらも、十数年にわたって既存のIT部署を強化し、システム再構築に取り組んできました。その結果、明治グループ全体のバリューチェーンの強化に資するITインフラ、企業価値向上に貢献できるDX推進体制が整ったと自負しています」(古賀氏)
現在は、独自の認定制度のもとで全社員がITリテラシー教育を受け、全社的にDX推進に取り組んでいる。
※MES(Manufacturing Execution System:製造実行システム)製造現場での生産プロセスを管理・最適化するためのシステム