最近の音楽業界で注目を集めるのは、米ビルボードのヒットチャートにランクインしたYOASOBI、Creepy Nutsなど、グローバルで成功するアーティストたち。ネット時代、SNS時代のマーケティングは従来からどう進化しているのか? 本連載では『令和ヒットの方程式』(博報堂DYグループコンテンツビジネスラボ/祥伝社)から内容の一部を抜粋・再編集し、ヒットコンテンツが生まれる時代背景やメカニズムを解説する。
第2回は、TikTokなどのショート動画から生まれたヒット曲を分析。「使いやすい」「遊びやすい」「真似をしやすい」楽曲がバズる仕組みとは?
20年代前半/ショート動画でクリエイターに「使われる」
■ 〈時代背景 〉世界を席巻するショート動画
2017年、TikTokが日本にてサービスを開始した。それを追ってInstagramが2020年にReelsを、YouTubeが2021年にShortsをスタートする。2024年の現在も、ショート動画は世界を席巻している。ショート動画がどうしてここまで世界に受け入れられたのか、ショート動画の元祖であるTikTokを例にその要因をまとめてみよう。
まずひとつ目として挙げられるのが、短い動画がデジタルネイティブ世代の「タイパ(時間対効果)を重視する行動様式にマッチした」というもの。アプリの操作も、上下スワイプですぐ次のコンテンツに移動し、次のコンテンツも自動で再生が始まるというものである。
ユーザーは1秒から2秒という短時間で、そのコンテンツが自分の見たいものかどうかを判断し、スキマ時間でも大量の情報に触れることができる。このようにタイパ重視のユーザーに、ショート動画での効率的な情報取得がマッチしたのである。
2つ目に挙げるのが、「アルゴリズム」である。TikTokで動画を検索するユーザーは少ないのではないか? それは、動画プラットフォームがコンテンツをおすすめしてくれるので、ユーザー自らがコンテンツを探さなくてよいからだ。