TikTokはその強力なAI技術で、ユーザーに最適化された動画をレコメンドしてくれる。そしてユーザーが使えば使うほど、その精度は高くなり、本人も気づいていない、潜在的に好きなコンテンツをおすすめしてくれるのだ。

 2020年のプロモーションテーマである「きみが次に好きなもの。」というコピーに表されるように、まだユーザーが出会っていない「新しい好き」に出会えるプラットフォームがTikiTokである。今まで、生活者はコンテンツ情報を検索し、コンテンツへの興味を深めていったが、ショート動画では、AIの力で興味の範囲が広がっていくようになった。

 最後に挙げるのが、「動画作成のハードルを極限まで下げた」ことである。

 YouTubeでは長尺に耐えられるクオリティの高い内容と編集技術が必要であった。一方TikTokは、スマホで撮影・編集・投稿が完結すること、短い尺でもOKという手軽さにより、すべての人が動画を作れるようになった。

 また、TikTokのカルチャーであるリップシンク(口パク)動画や、上半身だけの簡単なダンスは、クリエイターとしての参入障壁も低く、またたく間に若年層の間で広まったのである。さらに、前述のショート動画のアルゴリズムは、クリエイターにとっても有益なものだった。

 従前のソーシャルメディアは、フォロワーを起点に広がるアルゴリズムだったため、「バズる」ためにはまずフォロワーを集めることが必要であったのだ。

 しかしTikTokは、コンテンツさえ良ければ、フォロワー数に関係なく多くのユーザーに接触し、バイラルが起きやすいアルゴリズムになっている。そのため、新規のクリエイターが投稿を始めやすい環境にあった。総クリエイター時代に、最もクリエイティブしやすいアプリとしての存在が、この広まりを生んでいるのだ。

 一方、ショート動画アプリ上での音楽とはどんな存在なのか。

 長年、動画投稿の際にユーザーを悩ませてきたのが、「著作権」の問題だった。TikTokは、音楽を動画のクオリティを高める重要なファクターであるとし、JASRAC(日本音楽著作権協会)と包括契約を締結することで、JASRACの管理楽曲であれば投稿のBGMとして自由に利用できる仕組みを作り、著作権問題を解決するエコシステムを確立したのだ。

 結果として、ユーザーは自由にさまざまな楽曲を使え、さらに多くの創作投稿を行い、それを見に来る視聴ユーザーもさらに増加する。

 アーティストサイドは、多くのユーザーに楽曲を届けるプロモーションチャンスを得ると同時に、楽曲の収益化も図れる。このようなエコシステムの確立で、TikTokは音楽業界にとって、新しいユーザーとの接点となり、収益化の場となったのである。