「業務スーパー」を運営する神戸物産は、2026年に向けた中期経営計画で「外食・中食事業の拡大」に加え、「プライベートブランド商品の強化」「業務スーパーの継続的な成長」という積極的な事業展開の方針を打ち出した。重点施策である「業務スーパーの1130店舗出店」「PB比率37%」の礎となる同社の強みはどこにあるのか? 前編に続き、沼田博和社長に中期経営計画の狙いや独自のローコストな販売システムの仕組み、今後の出店戦略などを聞いた(後編/全2回)。
製造コストが抑えられる仕組み
――前編では、ローコスト経営を支える店舗運営の工夫について聞きました。通路に段ボール箱のまま陳列していたり、珍しい外国商品が陳列されていたりすると、商品を探すこと自体に一種の娯楽性が生じるのかもしれません。
沼田 ありがたいことに、お客さまの「お買い物が楽しい」という声をよく聞きます。前編でお話ししたような店舗運営コストを削減するための工夫が、結果として、商品を見つける楽しさや高揚感につながっているのではないでしょうか。
ただし、商品のアイテム数は絞り込んでいます。一般的な食品スーパーでは約3万点の商品が店頭に並んでいると言われますが、業務スーパーではおよそ2500~3000アイテムに抑えているのです。
それだけお客さまにとっては選択肢が少ないわけですが、少品種を大量に購入することで価格を抑えることができます。また、メーカーのSKU(在庫管理上の最小単位)を削減することにもなるため、製造コストの抑制につながります。
私たち自身が食品加工を行うだけでなく、海外メーカーとも取引があるために実感するのですが、特に世界でもトップクラスのメーカーでは生産効率に対する考え方が極めて厳格です。
一般的なメーカーの場合、1つの製造ラインで多品種を製造するケースが少なくありません。なかには、1ラインで100種類を超える商品を製造しているメーカーさえあります。そうしたラインでは、製造する商品を変えるたびに包装用フィルムを交換したり、細かな設定を変更したりしなければなりません。
また、レシピが変わる場合には、いったんラインを止めて、機械を洗浄することになります。当然、このときにラインに残っている原材料は全て廃棄されます。そうして作業の中断が度重なると、1日あたりの実質的な稼働時間が2、3時間程度でしかなくなるケースも実際にはあるようです。
一方、生産効率を徹底して追求するメーカーでは、製造ラインの中断を最小限にとどめようとします。