業務スーパー1号店の開業から20年余りで、時価総額1兆円企業へと成長した神戸物産。牛乳パックに水ようかん、豆腐パックに冷凍チーズケーキ・・・一風変わった商品、独特な店舗は一体どんな発想から生まれたのか? 本連載は、創業者・沼田昭二氏が業務スーパーの型破りな経営の仕組みを語り尽くした『業務スーパーが牛乳パックでようかんを売る合理的な理由』(沼田昭二、神田啓晴著/日経BP)から、内容の一部を抜粋・再編集。
第1回は、一度動き出せば、さほど労力をかけなくても、長い期間もうかる「ドル箱」といわれる仕組みを生み出した沼田氏の、独自の思考法に迫る。
<連載ラインアップ>
■第1回 業務スーパーは、なぜ牛乳パックでようかんを売るのか?(本稿)
■第2回 経営危機の乳業メーカーは、なぜ神戸物産のもとでようかんを作り始めたのか?
■第3回 1リットルの牛乳パック入り水ようかんは、なぜ他社にまねできないのか?
■第4回 破綻寸前の製パン企業が傘下で1カ月で再生、神戸物産の型破りな経営とは?
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「変」な商品は実は合理性のかたまり
経営者がビジネスモデルを構築するとき、大切にすることは人それぞれでしょう。私の場合、それは「精緻に、周到に、合理的に作ること」です。
仕組みといってもいろいろなイメージがありますが、私が作りたい仕組みは、「一度動き出せば、それほど労力をかけずに、長い期間もうかる」というものです。この本ではそういう仕組みを「ドル箱」と呼ぶことにしましょう。
私は神戸物産で業務スーパーという「ドル箱」を作り、磨き上げることに全身全霊を傾けました。ドル箱作りは、動き出せば楽ですが前準備に労力がかかります。そもそも私の場合、考える時間がとにかく長い。なぜかと言いますと・・・。
■「細胞レベルまで分解して考える」
これが私の思考法だからです。
とにかく物事を微細なレベルまで分解し尽くします。分解した上で、その成り立ち、仕組みを理解します。仕組みに必要な要素を原理原則まで理解してから計画を立てるのです。
こんなことをやっていたので、業務スーパーの構想を固めるまでに2年の歳月を要しました。 「忙しい現代人に2年も考える時間はない」。そんなふうに考える方もいらっしゃるでしょう。けれども、この考え方で起こした事業は、軌道に乗れば成長の最短ルートを描くことができます。作ってしまえば、後は仕組みを改良していくだけで、自然と成長します。「ほったらかし」でもええかもしれません。実際、業務スーパーは加盟店に対して、事細かなルールや管理を押しつけてはいませんし、ビジネスモデルも20年前から大きな変化はありません。20年も持続的な仕組みは今時珍しいと思いませんか。
そして、合理的に考え抜いたシステムで周りを納得させれば、こちらから動かずとも、人も金も自然と集まります。これは、物事を徹底的に調べているからこそ味わえる醍醐味です。