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 国内外で1500以上の直営店を展開し、年間の来客数は2億人を超えるサイゼリヤ。創業者の正垣泰彦会長は、大学4年生だった1967年に小さな洋食屋を開業して以来、安くておいしい料理の提供を追求してきた。本連載では『一生学べる仕事力大全』(致知出版社)に収録されたインタビュー「最悪の時こそ最高である」から内容の一部を抜粋・再編集し、正垣氏の経営観と人生観を紹介する。

 第1回は、千葉県市川市で17坪・38席の洋食屋をオープンし、店舗が火事で焼けるなどの辛酸をなめた創業期を振り返る。

満足した瞬間から衰退が始まる

一生学べる仕事力大全』(致知出版)

――コロナ禍で外食産業は苦境に立たされていますが、サイゼリヤは今期の通期予想によると前期比で業績が回復する見通しで、健闘されていますね(2021年10月13日決算発表=売上高1265億円、経常利益34億円)。

正垣 コロナ禍って確かに営業時間が短くなったり売り上げが下がったり、いろんなことが起こるでしょう。だけど、創業期に何をやってもお客さんが全く来なかった時のほうが、よっぽど経営は大変でした。その頃に比べたら大した苦境ではないと思っています。

 一つ意識してきたのは、資産と人財を蓄積すること。創業間もない頃、この会社を将来どうしていくかって自分で考えた時、小さいなりに、資産と人財を集めていればどんな危機が来ても乗り越えられると思って、資産と人財を蓄積することをずっと目標にしてきました。その積み重ねがあったからこそ、堀埜社長体制の下、テイクアウトや宅配サービスを新たに導入したり、様々な感染対策を打ち出すことができています。

――将来の危機を見据えて備えを怠らなかったと。

正垣 うまくいかない、思い通りにならない、それが人生ですよね。つまり失敗することが前提にあるわけです。失敗して失敗して失敗すると、最後は成功に漕ぎ着く。人間ってうまくいくとダメになっちゃうんですよ。エントロピーの法則(物事は放っておくと無秩序な状態に向かい、自発的に元に戻ることはない)と同じで、これでいいと満足したところから進歩はなくなってしまう。

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