三菱UFJ銀行の支店勤務の女性行員が、支店の貸金庫から顧客の金品十数億円を盗み取っていた事実が発覚した。金融機関の信用を根底から揺るがすような事件であるが、詳細はまだ不明のままだ。いま同行内部では何が起こっているのか。かつて都市銀行に勤務した経験を持つ作家の黒木亮氏が前後編、2回にわたって解説する。(JBpress編集部)
(黒木 亮:作家)
三菱UFJ銀行の行員(女性営業課長)が、顧客の貸金庫から十数億円相当の金品を盗んだことが明らかになって1カ月半が経つ。しかし、犯人の名前はいまだ公表されず、逮捕もされていない。
世間では不思議に思う人が多いようだが、元バンカーの目から見ると、当然である。それはなぜか、そして犯人は今どこにいて、三菱UFJ銀行内部ではどんなことが進行しているのかを解説する。
【参考記事】「貸金庫から十数億円窃盗」でクローズアップされる銀行員のモラル低下、表沙汰にならない不祥事が行内にゴロゴロ(JBpress:2024年11月28日)
帰ってこなかった先輩行員
銀行でこの種の不祥事が起きると、犯人(あるいは疑われた行員)は、銀行の本部や施設などに出頭し、連日厳しい事情聴取を受ける。現金が数万円なくなった程度の事案であれば、支店業務を離れ、数日から1週間程度、聴取を受ける。
筆者は、竹中平蔵金融担当大臣に敵視されて経営が傾き、2004年に東京三菱銀行(現三菱UFJ銀行)に実質的に吸収合併された関西系の大手都市銀行に14年間勤務したが、入行店の津田沼支店時代、自分の勘定が10万円合わなかった(現金が不足した)20代後半の資金係の男性行員が不正を疑われ、1週間ほど本部に通って事情聴取を受け、クロと判断されたのかどうかは分からないが、最終的に支店には復帰しなかったという出来事があった。