(写真:w_p_o/イメージマート)
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(黒木 亮:作家)

 三菱UFJ銀行の練馬支店と玉川支店に勤務していた行員が、支店の貸金庫から顧客の金品十数億円を盗み取っていた事件が発覚した。銀行の貸金庫というのは、ある意味で最も信頼性の高い施設だと考えられているので、衝撃的である。この行員に関しては「店頭業務の責任者」だったと報道されているので、支店長代理の上の営業課長であろう。

*写真はイメージ(写真:Emiel Lops Photography/Shutterstock)
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 筆者は大学卒業後、大手都市銀行に14年間勤務したが、同行は2000年代初めに竹中平蔵金融担当大臣に睨まれ、東京三菱銀行(現三菱UFJ銀行)に実質的に吸収合併された。自分自身の経験から、銀行員の不祥事で表沙汰になるものは、氷山の一角でしかない(報道されない金銭がらみの不祥事はメガバンク一行あたり年に少なくとも50件程度はあるはず)と感じている。

 不祥事が起きる原因は、酒、女(男性行員の場合)、ギャンブルである。これは世間の他の業種とまったく変わらない。むしろストレスが高く、かつお金と直に接する仕事柄、銀行員のほうが落とし穴に嵌る確率が高いと言える。女性行員による億円単位の窃盗事件も、過去繰り返し起きており、こちらは男がらみが多いようだ。

理不尽な叱責

 筆者は、入行2カ店目の25~26歳の頃、横浜支店に勤務していた。入行当初から国際部門勤務を希望し、英語力も大卒同期の中で4~5番目であったにもかかわらず、1カ店目は津田沼支店という外国為替も扱っていない千葉県の郊外店(預金集めを主業務とする小さな支店)で、2カ店目も横浜支店で100社程度の中小企業の融資担当をやらされた。

 ある時、横浜支店に巡回面接に来た人事部の部長代理と配属に関してかなり険悪な話し合いになったところ、それが同じ大学の7年次くらい上の先輩で、筆者の採用にも関わった人事部の部長代理の耳に入ったらしく、呼び出された。

 神田の居酒屋で「きみは今どんな仕事をしているんだ?」と訊かれたので、毎日やっている中小企業向けの融資の話をしたり、そのかたわら支店の業績に寄与するよう、個人顧客の積み立て預金なども集めているといった説明をした。すると「そんな仕事をさせるために、銀行はきみを採用したんじゃない!」と怒鳴りつけられた。

 こちらは「はぁ?」である。融資も積み立て預金集めも、命じられたからやっていたのである。「では何の仕事をやらせるためにわたしを採用し、今銀行がわたしに命じてやらせている仕事は、それとどういう関係があるのですか?」とでも訊けばよかったのだろうが、理不尽な叱責にあまりに腹が立ったのと、平気でそういうことを言うこの人は頭がおかしいのではないかと思ったので、訊かなかった。