食品会社の味の素には、世界中で現地の社員を使って市場で商品を行商して歩き、味を現地に根付かせる活動を行っている「グリーンベレー」と社内で呼ばれるチームがある。彼らの哲学は、「人間は善い生き物でもなく、悪い生き物でもなく、誘惑があれば負けてしまう弱い生き物である」という「性弱説」である。
それにもとづいて、悪い行動に走ることなく、かつ意欲をもって目標に邁進することを後押しするような様々な仕組みをつくり、中国、アジア諸国、インド、ナイジェリア、ペルーなど世界各地で現地社員に行商をやらせ、成功している。邦銀も、味の素のグリーンベレーのように、性善説から性弱説へと態勢を移行することが必要だろう。
不正防止のためにデジタル化を急げ
それともう一つ、不正を防止するのに役立つのが業務のデジタル化(コンピューター化)である。英国では民間企業だけでなく、行政においても徹底したデジタル化を行っている。
コロナ禍の際のワクチンの接種予約、国家年金の受給申請、税務申告、税務調査、各種免許の申請、不動産登記簿の閲覧、年金保険料の払い込み記録の確認、自治体の植物性ゴミの回収依頼と料金支払いなど、ありとあらゆる行政サービスがデジタル化されており、スマートフォンやパソコンで手続きが完結する。企業の破産手続き申請でも、日本では山のような書類を裁判所に持ち込まなくてはならないが、英国ではずいぶん前から関係書類をすべてスキャンして送るデジタル申請である。
英国の銀行もまた、業務のデジタル化を猛烈に推し進めており、基本的にすべての手続きがオンラインでできるようになっている。デジタル化がすべていいとは言わないが、それによって行員の不正防止にも役立つのは間違いのないところだろう。
ざっと言って、日本のデジタル化は欧米に30年くらい後れをとっている。貸し金庫の問題にどう応用するかも含め、邦銀は鋭意努力すべきだろう。