サービスの質も金次第
──企業も意識を変えていく必要があります。
藤野:そうです。働き手をつなぎとめるためには、企業側も賃金や労働環境を整えなければなりません。そのためには商品やサービスを変えざるを得ないでしょう。
まず、給与水準を上げなければ人を雇えなくなります。また従業員に権限を与えて意見を汲み取る、怒ったり怒られたりせず心理的安全性を高めるといった努力もしなければなりません。
さらに、スポットワークのような働き方をするフリーランスや副業人材に対する待遇改善も必要です。外国人労働者を差別するような職場は淘汰されるでしょうし、就労ビザの手続きや日本語学習のサポートなどの仕組みづくりもしなければ、働き手を確保できなくなる。
また、本質的な職場環境の改善も不可欠です。大事なところは人間が担い、単純作業はロボットがやるなど、DX化、ITを活用した業務効率化、自動化やロボット活用も必要です。
──サービス現場のDXや自動化はなかなか進みません。
藤野:僕が応援している会社の一つに、シフトワーカーの職場環境を整えるツールを提供している「HATALUCK(はたラック)」という会社があります。
たとえば、コンビニの店長は「新商品の説明」や「シフトを組む作業」を負担に感じやすいそうですが、これを解消するために、店長、アルバイト、スポットワーカーが情報共有できるマネジメントツールや、シフトをスタッフの状況に合わせて自動で組むツールなどが現場で活用されています。
こうしたIT化やAI活用は、大手企業に限らず零細企業や個人店でも避けては通れません。導入せずに効率が悪いままだと、社員のモチベーションを下げることになり、働く人が離れてしまいます。
最後に、サービス戦略の再構築も必要ですね。
──サービス戦略ですか?
藤野:これからは万人を満足させるサービスを提供することは難しくなります。顧客が超富裕層なのか、中級層なのか、所得の低いチャレンジ層なのかを絞り込み、付加価値の高いサービスに資源を集中させていかなければならないでしょう。
そのためには企業価値のブランディングや差別化を行い、安さや速さだけではない、独自の価値を確立することも大事だと思います。自分たちがどの層を取りに行くのか。超富裕層に対してはこれまでのようなきめ細かなサービスを提供する、チャレンジ層については究極、セルフサービスに近い形にしてしまうといった話。
──ディズニーのプレミアアクセスのように、お金の有無で列の順番が代わるような時代になるんですね。
藤野:そうです。