求められるのは「シン消費者」像

──私も一時期、米国に住んでいたことがありますが、日本のサービスに慣れていた身にはいろいろと衝撃的でした。

藤野:僕はちょっと前に、パリ、ホノルル、ニューヨークなど世界中を旅したのですが、世界ではそうしたサービスの劣化はもはや常態化しています。

 飛行機の遅れ、航空券のオーバーブッキング、荷物の紛失など最悪なことばかり。僕も旅行中、預けていたスーツケースが紛失して、その後の予定が大幅に狂ってしまいました。

──公共機関の対応も決していいとは言えません。

藤野:飲食店でも高級店以外は注文が来なかったり、間違ったメニューが運ばれてきたり、そんなことは普通のことです。

 ただ日本と違って、海外は消費者ががまん強いんですね。雑で不親切なサービスでも「サービスとはこういうものだ」と受け入れていて、日本人のように「サービスされるのが当たり前」だとは思っていない。

 では、なぜ欧州や米国の消費者はがまんできるのか、それは、その状況を受け入れなければサービスが受けられないからです。

 そして、これからは日本人もその状況に慣れていかざるを得ません。消費者側が意識を改め、過剰なサービスを求め過ぎない「シン消費者」像を確立する必要があると思います。

サービスを提供してくれる人に「ありがとう」を言おう

──日本のサービスが米国並みの品質まで下がると思うとうんざりしますが、消費者が現実を受け入れるしかないということですね。

藤野:日本では当たり前の「24時間営業」「細やかなサービス」は、企業や従業員に大きな負担をかけています。人手不足の時代は、企業と消費者の両者が妥協しなければいけません。

 僕個人は「シン消費者」として、なるべくセルフレジやモバイルオーダーなど、セルフサービスの業態を利用するようにしています。おそらく10年後には、こうしたスタイルが当たり前になる。決済はほとんど自動化され、逆にキャッシュレスを利用しない消費者は、高いサービス料を支払うことになるでしょう。

 また僕が「シン消費者」に提案したいのは、サービスを提供してくれる人に「ありがとう」を言うことです。「え、どうして客が『ありがとう』を言わなければいけないの?」と思われるかもしれませんが、これからは消費者が「やっていただいてありがたい」と思わなければならない。

 もはやお客さまだから威張れる時代ではないのです。