トランプ大統領のドル安・低金利志向はFRBの判断に影響しない

 政権のポリシーミックスに対して実体経済情勢はあくまで受動的であり、その実体経済情勢に合わせて中央銀行は政策運営を調整する。いくらトランプ大統領が「利下げを望んでいる」と希望しても、それはFRBにとって単なる感想であり、実体経済情勢に適した政策運営が執行されるだけだ。

 トランプ大統領就任前後から「トランプ大統領のドル安・低金利志向を受けてFRBの政策運営やこれに伴う為替動向に影響はあるか」と繰り返し照会を受けるが、大統領とて経済・金融情勢にそぐわない金利・為替動向を強いることはできないとしか言いようがない。

 もちろん、パウエル議長の任期が来年に迫る中、今後、人事を通じた超法規的なアクションをもって利下げを強いるという場面が絶対にないとは言えない。

 例えば今週、その就任が承認されたベッセント財務長官は就任前、米誌のインタビューで、早期に次期議長を指名して「影の議長」とすれば、パウエル氏の発言は注目されなくなるとの持論を展開したことで注目を集めた。

 確かに、このアプローチならば、FRBが実際に政策金利を下げなくとも、ある程度、市中金利を抑制することは可能かもしれない。しかし、それとて持続性のあるものではなく、早晩、過熱する国内経済に配慮して金融政策は引き締め方向に戻されることになるだろう。