米国の利下げ局面で円高に戻るは微妙か

 FOMCのあった1月28日時点で、アトランタ連銀のGDPNowは実質GDP成長率に関し、前期比年率で約+3.2%と試算している。これは米議会予算局(CBO)の推計する潜在成長率よりも約+1ポイントも高い(図表③)。この状況が続くのであれば、むしろ利下げよりも利上げが検討されても不思議ではない。

【図表③】


拡大画像表示

 結局、「経済が堅調であるため、金利を調整するにあたって急ぐ必要はない」というパウエル議長の弁がすべてであり、金融市場は「利下げの終わり」が争点化するタイミングを推し量るゲームを当面続けることになる。

 ドル/円相場に目をやれば、「米国の利下げ局面が来れば円高に戻る」という定番の解説がやはり適切ではなかったという結末が徐々に近づいているように思える。

※寄稿はあくまで個人的見解であり、所属組織とは無関係です。また、2025年1月30日時点の分析です

唐鎌大輔(からかま・だいすけ)
みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト
2004年慶応義塾大学卒業後、日本貿易振興機構(JETRO)入構。日本経済研究センターを経て欧州委員会経済金融総局(ベルギー)に出向し、「EU経済見通し」の作成やユーロ導入10周年記念論文の執筆などに携わった。2008年10月から、みずほコーポレート銀行(現・みずほ銀行)で為替市場を中心とする経済・金融分析を担当。著書に『欧州リスク―日本化・円化・日銀化』(2014年、東洋経済新報社)、『ECB 欧州中央銀行:組織、戦略から銀行監督まで』(2017年、東洋経済新報社)、『「強い円」はどこへ行ったのか』(2022年、日経BP 日本経済新聞出版)。