トランプ米大統領に対する石油業界の不満が強まっている(写真:UPI/アフロ)

原油を「掘って、掘って、掘りまくれ!」とぶち上げていたトランプ米大統領に対し、石油業界からの不満の声が強まっている。トランプ関税などの影響で原油価格が下落し、採算性が悪化しているからだ。

(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)

 米WTI原油先物価格(原油価格)は今週に入り、1バレル=66ドルから69ドルの間で推移している。レンジ圏は先週と比べて1ドル上昇している。市場では久しぶりに地政学リスクが材料視される展開となっている。

  まず、いつものように世界の原油市場の需給を巡る動きを確認しておきたい。

  国際エネルギー機関(IEA)は3月の月報で「今年の世界の原油市場は日量約60万バレルの供給過剰になる可能性がある」との見通しを示した。米国と他の数カ国との間の貿易摩擦が激化し、原油需要が圧迫されることが主な要因だ。

 IEAはさらに「石油輸出国機構(OPEC)とロシアなどの大産油国で構成するOPECプラスが一部の加盟国の過剰生産を抑制できなければ、供給過剰の幅はさらに日量約40万バレル拡大する可能性がある」としている。

 OPECの2月の原油生産量は前月比36万バレル増の日量4101万バレルだった。カザフスタンの生産量は前月に比べて20万バレル増加し日量177万バレルとなり、割当量を30万バレル超過している。

 イラクやナイジェリアなども割当量を上回っている状況を踏まえ、OPECプラスは20日、これらの国々に対して「埋め合わせ減産」を実施するよう求めたが、効果のほどは定かではない。

 供給過剰の認識が強まっていることを受けて、ウォール街も原油価格の見通しを引き下げている。ゴールドマン・サックスは3月16日「今年末の原油価格は1バレル=67ドルになる」と従来の予測を下方修正した。

 需要サイドを見てみると、世界最大の原油輸入国である中国が消費促進特別行動計画を発表したことに市場は好感した。