中東で再び高まる地政学リスク

 中国の原油在庫が5年ぶりの低水準になっていることから、「原油輸入が今後拡大する」との観測も出ている。だが、「サウジアラビアの4月の対中輸出が大幅に減少する」との情報もあり、予断を許さない状況が続いている。

 需給面の悪材料をオフセットしているのが地政学リスクだ。

 イエメンの親イラン武装組織フーシ派が11日に「紅海を通過するイスラエル船への攻撃を再開する」と表明すると、米軍はフーシ派に対する攻撃を開始した。第2次トランプ政権発足後で最大の軍事作戦であり、米政府当局者は「作戦は数週間続く可能性がある」としている。

米軍はフーシ派に対する攻撃を強めている(提供:U.S. Central Command/ロイター/アフロ)

 トランプ大統領はイランに対してもフーシ派への支援を直ちに停止するよう警告している。これに対し、フーシ派は米空母への攻撃を繰り返しており、中東情勢は再び緊張の度を増している。

 この事態に慌てたのはサウジアラビアだ。サウジ政府関係者は17日「米軍の作戦に必要な兵站面の支援を行っていない」と述べ、自国の石油関連施設がフーシ派の標的にならないよう懸命になっている。

 トランプ政権はイランへの締め付けも強めている。

 米財務省は20日「イラン産原油の密輸に関与した」として、イラン産原油の主な購入者である中国の独立系製油所(ティーポット)や、ティーポットに原油を輸送するタンカーなどを制裁対象にした。この措置が実際に機能すれば、イラン産原油の輸出が今後激減する可能性がある。

 一方、トランプ政権はロシアに対しては融和的だ。